日本トップリーグ連携機構とACPCが、約1年前に一般社団法人Entertainment Committee for STADIUM・ARENA(略称ECSA/エクサ)を設立して以降、スポーツ界とライブ・エンタテインメント界の交流が活発になりました。研究会からセミナーまで、両者の顔合わせが実現したディスカッションをピックアップ。設立の目的である「スタジアム・アリーナ改革」だけではなく、「女性の社会進出」や「ライブの価値創出」など、ともに取り組んでいくべき課題が明確になってきました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
3つのディスカッションから見えてきた、スポーツとエンタテインメントの接点
コンテンツ・人・街をつなぐスタジアム・アリーナ
ライブ・エンターテイメントEXPOセミナー 2月5日 幕張メッセにて | |
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パネリスト | (写真左より) 田口禎則:ECSA事務局長/日本トップリーグ連携機構理事・事務局長 加来聖子:ACPC理事/GAKUONユニティ・フェイス代表取締役社長 |
モデレーター | 長井延裕:ECSAプロデューサー/LIVE ENTERTAINMENT Lab.副代表 |
対照的な観客の男女比 女性参加を促すために
まずモデレーターを務めた長井氏より、ECSA設立の狙い、活動内容が紹介されました。スタジアム・アリーナの計画(建築・運営)に利用者(競技・興行主催者・団体と観客)の利便性が必ずしも反映されていない現状に対して、改革を推進すること。建設自体が目的ではなく、完成した施設が地元に愛され続けるために、地域の実情を反映させ、街づくりの視点を取り入れることが重要であり、キーワードとして「コミュニティ&ライフスタイル・ハブとしてのスタジアム・アリーナ」などが挙げられました。田口事務局長からは「現在、80~90の計画が進んでいるが、建設まで辿り着くのは、そのうちの2割程度ではないか。スタジアム・アリーナをただつくるだけでは採算をとるのが難しい」との現状認識が示されました。
ディスカッションのテーマは「ライブ・エンタテインメントへの女性参加」へと移り、加来理事、田口事務局長の発言からエンタテインメントとスポーツ、両者の対照的な現状が浮き彫りになりました。例えば観客の男女比であれば、コンサートは8割が女性、スポーツ興行は7割が男性。スポーツ興行の中でもコンサートに近い競技もあり、加来理事がプロモートするフィギュア・スケートは、客席の95%が女性だそうです。スポーツの実施率は若い女性ほど低く、学生については、部活動に入っているか、いないかで二極化の傾向。スポーツの指導者のうち女性の比率は27.5%。団体役員は9.4%(音楽業界団体はもっと低く、ACPCでも5%)。こういった現状を受け、スポーツ興行への女性の観客増、スポーツ実施率増へ向けた議論が継続しました。「スポーツとエンタテインメントに共通して使えるチケットの発売」「フィギュアで生演奏をバックに演技をする公演があるように、スポーツ会場でも音楽を導入する」(加来)、「女子サッカーのプロリーグ化には、サッカーを通して女性が社会進出する姿を見せていきたいという意図もあり、『なでしこケア』という女子サッカー選手による社会貢献プロジェクトも実施している」「健康のために女性、子供がスポーツへ参加しやすい環境を整備したい」(田口)などの意見や報告が語られ、長井氏が「女性の参加によるコミュニティの活性化を目指し、その象徴にスタジアム・アリーナがなれば」とまとめました。