本誌でも度々お伝えしているようにライブ会場の運営全般に携わる労働力不足が深刻になってきています。以前であれば志望者の多かった学生アルバイトが、なかなか集まらなくなってしまった背景には、どんな時流の変化があるのでしょうか。また、労働力が不足することによって、ライブの現場ではどんな弊害が起きているのでしょうか。問題が深刻化するにあたり、コンサートプロモーターと労働力の提供を担う在京のアルバイト管理会社との間で、話し合いの場が持たれるようになっていますが、本誌でも問題の解決に向けたディスカッションを行いました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
お客様への対応、会場運営のクオリティに直結するライブ・エンタテインメントの現場の労働力不足
アルバイト事情の変化
アルバイトの若者達を始め、ライブ現場の労働力が不足している背景には、どんな事情があるのでしょうか。
田山:一般的に学生を中心としたアルバイト事情についていわれているのは、少子化の影響とか、大変な仕事をやろうとする若者が減っていることですよね。とはいえ、そもそもライブの現場の仕事は、時給が決して高くないのは分かった上で、音楽やエンタテインメントに興味を持っていて、ステージに関わる業務を経験したいという気持ちで参加する人達が多かったと思うんです。ライブが憧れの対象であったことに、こちらが甘えていた面もあったと思いますが、数年前から憧れだけでは人材は集まらなくなっているのが実状です。
落合:趣味の延長でアルバイトを選ぶ若者は少なくなっていると思います。無料でライブが観られそうだから、会場で働いてみたいという人はもうほとんどいないのではないでしょうか。本当に好きなアーティストのライブは、お金を出して観にいく。働くこととライブに行くことは分けて考える若い人が多いと思いますね。
小崎:興行数の増加や、開催が土日に集中していることも関係すると思います。平日の数倍の人員を土日に集めるのは、かなりハードルが高いですね。それと近年はコンビニでもカフェでも、都市部の駅の近くならどこでもたくさんのチェーン店があって、家の近所で気軽にアルバイトできる環境です。そんな中で、毎回職場が違うライブ会場での仕事に働きやすさを感じてもらえるかというと、なかなか難しいでしょう。普段は月〜金でコンビニのアルバイトをしている人に、土日のどちらか1日働くというパターンで登録してもらうなどの工夫が必要になります。