音制連とACPCのネクスト・ステップ ライブビジネス研究プロジェクト、始動
撮影:宇都宮輝
「最初から転売を目的にチケットを購入してサイトで売り出しているのは明らかにダフ屋行為」(中西)
「チケット転売サイトの問題はプロダクションとしても見過ごせません」(門池)
日本音楽制作者連盟(以下、音制連)の新理事長に、門池三則さんが就任したのは昨年6月。以降、門池理事長は様々なメディアで、プロダクションにおけるライブビジネスの重要性に言及し、ACPCとの連携を度々アピールしてこられました。そういった思いがひとつの形になったのが、ライブビジネス研究プロジェクト。両団体役員の代表者が定期的に集い、ライブビジネスの中核を担うプロダクションとコンサートプロモーターの協力関係を深め、業界の諸問題の解決に向けて調査・研究を進めるプロジェクトです。
今号の中西健夫ACPC会長の連載対談では、門池理事長に加えて、前半は同プロジェクトのリーダーである音制連の野村達矢理事も参加。ライブビジネスの未来について語り合う予定でしたが、「未来」というより、一日も早く解決しなくてはいけない課題が浮上し、対談は「緊急対策会議」の様相を呈することになりました。
門池:ライブビジネス研究プロジェクトの初回は、まずACPCの皆さんに音制連へ足を運んでいただきました。こちらがお招きしたこともあって、ACPCからのご意見を伺いましたが、それだけであっという間に時間が過ぎてしまった。これからもまだまだ時間をかけて話し合うべきことがたくさんあると改めて実感しましたね。
野村:音制連側からすれば、そもそもCDを始めとするパッケージ収入が減少してしまった状況があって、プロダクションの業務でもライブビジネスがより重要なポジションになってきているという前提があります。だとするならば、当然ACPCさんとの距離感をもっともっと密にしていかなくてはいけないわけで、そこには業界全体の共存共栄というテーマもある。コンサートにおける最新の問題点は何かを話し合い、課題をクリアしていくことで、お互いがハッピーになれればいいですよね。
中西:そんな中で大きな問題として浮上してきたのが、チケット転売サイトの問題です。
野村:チケットの個人転売、及びそれを助長する業者が急激に増えていて、チケットの消費習慣の中に入り込み始めています。しかも、高額で取引されている例も目立ちますからね。この実態を早急につかむ必要があります。
門池:音楽関連だけでどれくらいの市場規模になっているのか……チケット転売全体では約500億円ともいわれていますが、とにかく急速に広がっていることは間違いないでしょう。
中西:アメリカなどでは、例えばスポーツ観戦のチケット転売が当たり前になっているのは事実ですが、日本のコンサートなどにそのまま当てはめられるかといえば、そうではありません。コンサートを運営する側は、1年以上前から会場を押さえて、券売のプロモーションプランを練り、そこに宣伝費も投下して、ようやくビジネスとして成立させているわけです。もちろん赤字になる場合もあります。それが運営側と関係がない場所で高額売買されている現実は、どう考えても納得できないというのが正直なところです。
門池:スポーツの興行を運営する側とプレイヤーは、ある意味では別の基盤に立っていますよね。通常、プレイヤーは試合会場の選択やチケッティングについては関知していない。でも、アーティストはチケットの値段設定などを含めて、コンサートにマネージャーとともに密接に関わり合っています。チケット転売サイトの問題はプロダクションとしても見過ごせません。
野村:スポーツ選手の収入の基準は、記録や成績にも左右されますが、ミュージシャンの場合はコンサートの興行収入からダイレクトに収入を得ています。それと年間を通じて、継続的にホームスタジアムで試合を開催しているプロスポーツと、僕らみたいに年に1回、大きな会場での公演が大きな収入を得るほとんど唯一のチャンスだという興行形態では、やはり同列に考えられないと思います。
楽しみにしていたコンサートのチケットを正規のルートで購入したけれど、何らかの理由で行けなくなったお客さんがいたとして、そのお客さんを何らかの形で救済して欲しいという意見に関しては、もちろん充分理解できます。すべてのコンサートチケットの転売がいけないとは思っていません。ただ不当に高額で売られることに、ものすごく違和感があるんです。僕らが設定しているより高い値段で売られているにもかかわらず、運営側にもアーティスト側にもなにも入ってくるわけではないですから。