高木:日本における中央と地方の問題は、世界規模の話に置き換えると見えてくることもあると思います。世界を横断する動画配信サイトや音楽配信サービスが普及して、コンテンツがどんどん集約されていくと、文化の多様性が失われていくんじゃないかという見方もありますよね。でも、実際にそうはなっていない。アメリカ人もハリウッド産の映画だけでなく、字幕付きの外国の動画を観るようになっていますし、Netflixにはブラジルやドイツ、スペインの面白いドラマも相当数アップされています。現在、人々の趣味嗜好は細分化されていますので、世界的な規模で考えれば多様性、地域性は絶対に残っていくと思います。
中西:確かに、日本の1970年代や80年代の音楽も、YouTubeなどを通じて世界により知られるようになりましたね。今年行われた細野晴臣さんのニューヨークでのライブも売り切れましたが、お客さんはほとんど現地の方なんですよ。これもネット上で、音楽や映像のアーカイブに触れられる時代の動きかもしれないですね。
高木:日本のシティポップが世界から注目されている理由の1つに、昔の音楽でもネット上で何度も聴かれるようになり、発見されやすくなったことがあると思います。スポーツでも試合の映像アーカイブが充実していくことで、見方がどう変わっていくか興味があります。
村井:Jリーグでは試合の映像を海外に販売していますが、実は1000試合以上、全部リーグで映像を制作しているので、著作権は全部Jリーグが持っています。それらを使って、例えばゴールキーパーの立ち位置で、PKのボールが飛んでくるスピードを体験できる自由視点映像を研究したりしていますし、ゲームへの進出も始めているんです。
高木:スポーツ観戦はライブが重要であることは間違いありませんが、映像アーカイブを利用して追体験ができるようになると、より楽しみ方が広がるかもしれないですね。