中西:音楽ビジネスを改めて考えると、数年前に360度ビジネスという考え方が出てきて、レコード会社を中心にそちらへ向かった会社もあります。僕自身はアーティストから生まれるビジネスのすべてを一社が担うより、各社が能力の高いところをぶつけ合って、さらにいいものをつくったほうが良いと思っています。リスクを分散させて、一つのプロジェクトから利益が出た場合も皆で分配する。理想論ではありますが、それが音楽産業全体を盛り上げていくことにつながるんじゃないでしょうか。
斉藤:おっしゃる通りですね。音楽産業も経済ですから、お金が回って初めて隆盛への道が見えてくると思います。限られた会社だけ、ある業態だけにお金が集中すると、いびつな形でしか発展しなくなる。レコード会社のビジネスの形は現在、過渡期にありますが、きっといい解決方法が見つかると思います。
中西:Win-Winの関係をどうつくっていくかですね。
斉藤:弊社の例でいうと、ビクターロック祭りというイベントを開催していますが、大切なのはビクターの名の下にロックの旗を立てて、ロックファンに向けてアピールすることです。だからこそレコード会社が主催する意味がありますし、一回のイベントで利益を追求しようとしても、僕達は素人ですからうまくいかないと思います。
中西:やっぱり「餅は餅屋」なんですよね。一方でメジャーのレコード会社には、メジャーのレコード会社にしかできないことが明確にあるわけですから。
斉藤:メジャーのレコード会社に何があるのかといえば、マンパワーとネットワーク、一定の経済力。そして、それらを背景にした持続力ですよね。先の見えにくい時代であっても、僕達はアーティストと年間計画の話ができる。そこが大きな武器だと思っています。
中西:CDを5000枚売って、ライブの動員は1000人を目指している時は、インディーズでもいいと思うんです。それが3万枚売ります、武道館に行きますというポジションが見えた瞬間に、やはりメジャーの力が必要になるケースが多い。インディーズが悪いというわけではなくて、両者の違いを明確に理解したほうが、アーティストの成長過程で正しい選択ができるのは確かですよね。
斉藤:色々な選択肢があっても、最終的に市場全体が大きくなっていかないと、アーティスト志望の人達、音楽業界を志す若者にとって魅力的な業界に見えないですから。そこが一番大事だと思います。