中西:今日は京都会館がリニューアルして誕生したロームシアター京都のお話を伺いたいと思っていたんです。今後のモデルケースになると思いますし、新しいタイプのシアターとしてコンサートプロモーターも注目すべきじゃないかと。
楠本:京都会館は1960年に建設されたホールで、日本のモダニズムの巨匠の前川國男さんの建築です。それを京都市が文化芸術の拠点にすることを目的に建物全体をリノベーションし、地元の半導体メーカーであるロームさんがネーミングライツを取得して、今年1月にロームシアター京都として生まれ変わりました。3つのシアターと蔦屋書店があり、うちは2階に京都モダンテラスというカフェ・レストランをつくりました。
このカフェ・レストランは、1960年から今に至る京都の50年間を再現することがコンセプトです。それは京都会館へのオマージュであり、ここで映画も上映して太秦撮影所へのオマージュも捧げられればと思っています。料理は伝統的な料理からモダンに移る京都の食へのオマージュ。色々なオマージュを散りばめながら、衣食住を通して京都のモダンを楽しむ空間になっているんです。
中西:シアターと蔦屋書店、京都モダンテラスの運営はそれぞれ別なんですよね。
楠本:そうです。
中西:市が地元企業のバックアップのもとに運営するシアターがあり、書店やカフェも併設されていて、文化の発信拠点になるような場所ですから、本来ならばコンサートプロモーターである僕らも関わるべきだと正直に思いますね。
楠本:今後はぜひコンサートプロモーターの方にも関わっていただきたいと思います。
中西:こういう動きに対する目利きとコネクションがないといけないと思いますし、何より音楽に携わっている側のアイディアは、もっと必要とされていいはずですから、プロモーターがアーティスト側や行政にどんどん提案する必要があると思います。一人ひとりがエンタテインメントのプロデューサーにならないと。
楠本:食の業界も同じですよ。インバウンドで考えた時、海外からのお客様に懐石料理などを出すことから先に、なかなか意識が進まないんです。日本食のフォーマットはもっとたくさんありますし、日本食の魅力を伝えるためにエンタテインメント・プロデュースをしなきゃいけないんです。要するにおもてなしとは、楽しんでいただくことですから。エンタテインメントなんです。そこには音楽と食を融合させるような発想が絶対必要だと思います。
中西:各地のフェスでも、音楽だけではなく地元の食も一緒に提供するような形態が増えてきましたが、さらなる発展型をプロデュースする必要がありますね。