中西:現在のコンサート市場での大きな問題は、首都圏に集中していることなんです。今年上半期のACPC基礎調査によると、売上の54%が関東に集中しています。全国の売上の半分以上が関東、近畿圏も加えると80%近くになります。理由としては、アリーナなどの大規模会場が首都圏にばかりできるということがあります。この長崎をはじめ地方にもできてはいますが、もっと地方での建設を推進していかないと、さらなるアンバランスが生じてしまいます。
髙田:私は地域創生という言葉には、なんとなく違和感があって、地元からの「長崎という地域の創生に取り組んでくれて、ありがとう」という雰囲気が実は悩みでもあるんです。これはスポーツやエンタメなどのドリーム・ジョブといわれる業種にある、過酷な仕事だけどやり甲斐があるから働くという文化に対して、何か違うなと思う感覚と近いかもしれません。私達は「感動とビジネスの両立」というキーワードを社内でよく使うのですが、感動を生み出しながら、ちゃんと収益も上げてビジネスとして成り立たせることを、とことんやっていきたいと考えているんです。現時点ではまだまだ成功でもなんでもなくて、黒字化が見えてはじめてこのプロジェクトは成功なんです。さらにいえば、地域のためという大義名分だけではなく、我々の会社も社員の給料が上がって、休みも多くとれないと、人はついてきません。そして成功すれば、長崎以外でも民間企業が日本全国で同じように投資を始めるはずです。それが本当の意味での成功だといえるでしょうね。長崎は日本の端といわれますが、アジアでは真ん中だと思っていますし、街としての長い歴史もあります。各地域がそれぞれの強みを活かしたアイディアで、新しい扉を開いていくしかないんですよ。その中でエンタメはすごく重要で、本当に今日ここにいる皆さんのお力をお借りしたいですし、一緒にトライできればうれしいです。
中西:僕らは今まで音楽を中心としたビジネスをやってきました。でも、これからは「音楽の仕事をやっています」だけでは立ち行かない時代になってきていると思います。考えてみれば、僕らが常日頃手がけているフェスも、宿泊や飲食が関わっています。音楽だけではなくて、色々な要素が混じり合って成立しているわけです。そういう時代には、企業の試みと知見を学んでいくことがすごく大事になってきます。髙田旭人社長は、僕にとって年齢的には全然後輩なんですけれども、やられてきたことは先輩だと思っているので、これからもアドバイスをいただきたいですね。
髙田:今日は皆さんの前でお話しする機会をいただいて、本当にありがたいと思っています。長崎スタジアムシティの現場を見ていただいたり、ビジョンを示すお話ができる前までは、業界の方からも結構「長崎にこんな施設をつくっても無理じゃないか」という意見をいただいたんです。アーティスト側の方の考えでは「ファンクラブを通してチケットを売ることが中心なので、別に長崎じゃなくてもいいんです」となることも理解しています。長崎でコンサートを開催していただくためには、チケットがプラスアルファで売れる世界を我々がつくることが大事なのだと思います。半分ファンクラブ、半分はジャパネット経由だから買うという方が増えていくと、コンサートは開催しやすくなりますよね。そのためには、まず出演者と関係者の方に、この長崎スタジアムシティを楽しんでいただくこと。そして、私達がちゃんと売る力を見せていくこと。私達としてはとにかくここに足を運んでいただければ、ホテルや飲食で収益を上げられますし、BS放送との連携もできます。マネタイズのポイントはたくさんあります。トータルで収益を上げていけば黒字化も実現できるんじゃないかと思っています。