大宮:実は私、3歳からバイオリンを習っていまして、TBSの音楽番組の司会をやっていたことがあって……。
中西:ちょっと待ってください、僕も3歳からバイオリンをやっていましたよ。
大宮:えー! じゃあ、2人でバイオリンのバンド組んじゃいます?
中西:始めたのが3歳からと全く一緒で、驚きました。すみません、お話を続けてください。
大宮:高校生くらいでやめていたんですが、ミュージシャンの友人や先輩方がその話を面白がってくれて、フェスでも演奏することになっちゃって。(恐縮すぎなんですが…)司会をやらせていただいていたTBSの番組では、坂本龍一さんとセッションまでさせていただいてしまい…また恐縮…。ヤバくないですか? もう絶対、視聴者の方々からクレームが殺到すると思ったら、案の定いっぱいきました(笑)。坂本さんは東京国際フォーラムでライブも観ましたが、素晴らしかったです。バックにオーケストラがついていて、演奏者がみんな違うことをやるんです。バイオリンって、ファースト・バイオリン、セカンド・バイオリンが同じ音を出すので、同じパートが20人いても1本の音に聴こえるのに、みんなが細かく違う動きをしたんです。だから細胞がうごめいているように聴こえて、ゾワーッときました。もう完全にアートでしたね。アイスランドで、ドゥーンドゥーン系のフェスに出ている坂本さんを観たこともあって……。
中西:EDMのフェスですね。
大宮:「ドゥーンドゥーン」でよく分かりましたね。
中西:一応、コンサートプロモーターなので(笑)。
大宮:色々なホールでドゥーンドゥーンって大きな音が鳴り響いている中で、坂本さんは超小さな音でピン……と演奏するんです。最初は聴こえなくても、続けていると客席のみんなが集中して聴くようになっていく。そのライブも驚きました。私だったら他のホールに負けないように、大きな音を出そうとしちゃいますが、坂本さんは心が強い、強靭な精神だと思いました。
中西:大きな音だと余計に紛れてしまうんですよね。小さい音は耳を研ぎ澄ませないと聴こえないので、観客はより集中することになる。坂本さんはおそらくそこまで考えて演奏されていると思います。
大宮:なるほど。私もコンサートに行くなら、クラシック系というか、音の響きが心地いいホールがいいですね。東京国際フォーラムも好きだし、サントリーホールや新国立劇場の小劇場、オーチャードホールにも行きます。残念なのはドリンク。ライブハウスと違って、ホールはあまり飲食がありませんよね。ロンドンのコンサートホールだと飲みながら観るのが当たり前なのに。
中西:バー自体がないところがほとんどですからね。
大宮:ロンドンだと『オペラ座の怪人』でも、みんなシャンパン飲んで、酔っぱらって観ていますから。日本だとミュージカルを緊張して観ている感じですよね。
中西:エンタテインメントですから、酔って観るほうが楽しめることも多いんですよ。
大宮:感情がほぐされて。
中西:日本人はもともとシャイなことに加えて、なんでもかしこまってしまうというか。
大宮:それと『オペラ座の怪人』もそうですが、高い席から安い席まで、チケットがある。すごく安く買える席もあるから、学生でもオペラを観られるんです。若い人にとっては、もちろん爆音で盛り上がれるフェスが楽しいと思いますが、それだけじゃなくて、オペラを観にいこうよ、ミュージカルも観にいこうよ、落語もクラシックも聴こうよ、となったほうがいいと思うんです。
中西:どんな芸術にもライブ・エンタテインメントはあるわけだから、そのあたりをちゃんと僕らもエデュケーションしていかないといけないですね。
大宮:そうですね。美術館でも、日本だと年輩の方がゴッホなんかを鑑賞するイメージじゃないですか。海外では子供達も多いですよね。若い子達にもっと高級なもの、上質なものを知ってもらう仕組みを考えないと、日本がダメになってしまう気がしているんですよ。
中西:人が自分の手で生み出すものの素晴らしさを知ってほしいですね。
大宮:私は各地のフェスでライブ・ペインティングもやっているんです。例えば道後温泉の町おこしみたいなところに、矢井田瞳ちゃんを誘って、彼女が歌っている隣でバーッと絵を描いたりして。客席を見ていると若い子がウェーンと泣いているんです。「なんで泣いているんですか?」と聞くと「わからない。なんかピンクの色を見ていたら泣けてきちゃいました」って。そういう経験をすると絵がすごく近い存在になる。次に「美術館に行ってみようかな」となるんですよ。美術を好きになるきっかけというか、架け橋になりたいですね。
中西:最後に未来に向けたいいテーマを示していただきました。