野村:これからの時代を見据えて話すと、CDが音楽産業の中心だった頃は、アーティストが稼働していなくても、ある意味では勝手にCDが売れていって、権利収入もそれにともなって増えていくという構図だったのですが、ライブ・エンタテインメントになるとアーティストが実稼働しないと稼げない。つまり、時間にも収入の伸びにも限界があるわけです。そこをプロダクションがどう考えていくかがポイントだと思っています。
中西:これはキャリア・アーティストに限定されるかもしれないですが、洋楽でいえば日本でも最近ローリング・ストーンズ展が開催されて、国内アーティストでは嵐の皆さんの展覧会も開かれているじゃないですか。ライブ・イベントとは違う形になりますけれど、アーティストがある程度のキャリアを持っていれば、アーカイブをまとめてうまくイベント化できると思うんですよ。それを全国でもツアーのように展開していくやり方はあるんじゃないかと、最近考えているんです。
野村:安室奈美恵さんの軌跡を振り返る展覧会も成功しましたからね。
中西:少し前でしたらデヴィッド・ボウイとか、海外では一つの主流になってきています。テクノロジーが進化してくると、過去のアーカイブも新しい表現で見せることができるでしょうし、色々と考えられると思うんです。
野村:音楽をテーマにした展覧会を巡回できる、一定規模のギャラリーが主要都市にあるといいんでしょうね。多少の出品点数の違いはあっても、パッケージで回せれば効率的な収益が見込めるはずです。
中西:ストーンズ展のマーチャンダイジングも、客単価がすごく高かったそうです。
野村:ライブの話に戻ると、プロダクションは海外にライブの収入源を求めていかなくてはいけなくなると思いますね。そうなるとライブを成り立たせる音源も、国内市場向けだけではなく、海外を視野に入れてつくる必要が出てくるというか、アーティストにもスタッフにもそういう才能が求められるようになる。プラットフォームがグローバルになっているので、デジタルのフィールドでのインカムも、もう一度考え直さなきゃいけない。
中西:そこには違法なものに対して、どう立ち向かっていくかも含まれるわけですよね。
野村:そうですね。正当なインカムもまだ主張し切れていない面もありますし。それこそプラットフォームのアメリカ本社、中国本社みたいな人達にどういうふうに立ち向かっていくかとなると、単純に一音楽団体では済まないですからね。日本のエンタテインメント全体として、どう主張し、交渉していくのかが、すごく重要になってくると思います。音制連の範疇では対処できない問題も多々出てくる予感はしています。
中西:オールジャパンで業界全体を良くしていくために、団体の枠組みを飛び越えて協力し合うことが、これからも間違いなく重要になりますね。