
PROFILE ひらた・たけお
1982年、通商産業省( 現経済産業省)入省。サッカーのプロリーグ化検討委員会に参加し、Jリーグ発足に尽力。日本サッカー協会国際委員として、W杯招致にも携わる。2002年、日本サッカー協会専務理事に就任。なでしこジャパン誕生や女子サッカー、フットサルの普及に尽力。2006年、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授に就任。2013 年より内閣官房参与、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局長を務める。編著書に『サッカーという名の戦争-日本代表外交交渉の裏舞台』( 新潮社)、『パラリンピックを学ぶ』( 早稲田大学出版部)、『新・野球を学問する』( 桑田真澄氏と共著、新潮文庫)、『スポーツビジネス 最強の教科書』( 東洋経済新報社)など。
平田:その他の変化でいえば、日本のコンサート会場でも、外国人のお客さんの比率がどんどん高まっていくでしょう。僕もできるだけ若い人達が集まるようなコンサートを観るように心がけていますが、やっぱり会場には外国の方が目立ちます。音楽とスポーツの親和性が高まったという話と同じように、海外からの観客増についても議論する必要があるかもしれないですね。
中西:中華圏で大人気の台湾アーティストの来日公演では、会場にかなり多くの中国の方がいらしていました。中華圏の公演ではチケットがとれないので、日本への観光と併せてコンサートに来られる方もいるようです。つまり、インバウンドの話なんです。それを僕らはもっと計画的にやるべきじゃないかなと思っています。
平田:それとコンサート会場での障害者の方への対応の問題。例えば会場が総立ちになった時に、車いすの方はどうしても見えにくくなるので配慮をしていただければ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて……という意味もありますが、環境整備の問題はそれ以降も残っていくものですしね。
中西:バリアフリー化は、そもそもコンサートの高齢化に向けて、とても大切です。お客さんがつまずかないように段差をなくすといった配慮や、日常生活レベルでちゃんと整備することが当たり前の世の中になっていくと思います。
平田:お客さんにとっても、アーティストにとっても、ビジネスにとっても、ベストなアリーナ、スタジアムとは何かを、ACPCが主体的に提案しなければならない時代になってきていると思うんです。やっぱり会場は一度つくってしまうと改修しにくいので、プランの段階からプロモーターの皆さんの意見が反映されていることが大事だと思います。
中西:おっしゃる通りですね。自分達が使いやすいものを、例えばスポーツ界と一緒につくるのだったら、我々も責任を持つべきだと思います。プロモーターだけではなく、他業種の経営者の中にも一緒にやりたいといってくださる方が増えてきているので、色々なジャンルの方々と一緒に進めていきたいですね。
平田:会場不足の問題で、ACPCの皆さんと相談していきたいのは、これまではイベント使用が禁止されてきた場所の利用です。道路を一時的に封鎖して会場にするとか、公共空間や公園、あるいは会社の社内や大学のキャンパスを利用して行うパブリック・パフォーマンスですね。
中西:日比谷公園を全面的に使った音楽祭は来年開催する予定です。大学の利用も充分考えられるんじゃないでしょうか。ただし、住宅地に近い場合は音量の問題などに注意を払わないといけないですね。
平田:最後に働き方改革でも、やはり責任主体として政策部門と対話していただきたいですね。音楽産業は9時~5時の業態とは違う典型的な業界ですが、単純にいって、コンサートに関わる人達が実際にどういう仕事をしているのか、業界外の立場からはわからないと思うんですよ。そこをうまく伝えてくださった上で、議論が進められればいいと思います。