斉藤:レコード協会がこの数年で最も力を入れているのは、違法配信の取り締まりであり、音楽はタダで手に入れられるというユーザーの感覚を一掃するための様々なキャンペーンです。これは今後も変わりませんし、逆にいえばこのテーマに対する決着は今なおついていませんから、さらに力を注いでいくべきだと思います。それこそ人生をかけているアーティストのためにも、フェアな環境をしっかり構築したいですね。
それと、未来の音楽産業を視野に入れた人材育成。毎年4月に、加盟各社の新入社員を集めて研修会を開催しています。各社それぞれ個性的な若い人材を採用していますが、共通しているのは皆「念願のレコード会社に入ることができました!」と希望に溢れていることです。ここにも自分の将来、人生をかけようとしている人達がいるんだと実感しています。もちろん、企業に入ったからには、ただ音楽が好きなだけでは壁にぶつかることが必ずあります。そんな時にも次のステップに進めるようにしなくてはいけませんね。
中西:ACPCでも年に1回、人材育成研修会をやっています。こちらは新入社員が対象ではなく、毎年全国の正会員社から150人くらいのスタッフが参加するんです。今年は女性にテーマを絞って、講師の方も女性をお招きしました。参加者も女性が100人以上になりましたね。
斉藤:ACPCの研修会は進んでいますねえ。
中西:合同研修会をやるのも面白いかもしれません。
斉藤:ぜひ、お願いします。女性をテーマにした研修会を開催されたとのことですが、レコード協会の加盟社の新入社員も、確かに女性がすごく多いんですよ。ところが10年以上経って、部署のマネージメントを担当する段階になると、あの女性達は一体どこに行ってしまったのかというくらい、圧倒的に少なくなるんですね。
中西:ディスクガレージだと、ここ3年くらい、現場担当で採用したスタッフは女性が多いですね。スタッフ全体でも6割以上は女性です。特に女性を採用したいという意図があるわけではないのですが、20代をフラットに見ると、優秀なのは圧倒的に女性です。
斉藤:広くエンタテインメント業界全体で考えると、例えば俳優系のプロダクションのトップが女性である例はたくさんあります。それがなぜ、レコード会社では難しいのか、真剣に考えるべき時代が来ているのかもしれません。女性の感性がとても大事になってきていますし。
中西:本当に大事ですね。
斉藤:30代、40代の女性達のキャリア・デベロップメントをちゃんとしないと、才能の無駄遣いというか、本当にもったいない。レコード会社も昔に比べてセールスのボリュームが小さくなっていることを踏まえると、限られた数の人材で勝負する必要がありますし、男女問わず、経営陣がもっともっと個々の社員と向き合うような時代になると思います。