中西:チケット転売サイトへの対策は、緊急を要する課題ですが、それ以外にもコンサートが土曜日・日曜日・祭日に集中している現状など、音制連の皆さんと話し合うべきテーマは数多くあります。
野村:一番チケットを売りやすいのは、土曜日開催の公演ですよね。
中西:確かに今、日曜日は売れなくなってきました。
野村:ビッグ・アーティストであればあるほど、当然いい日程が欲しいわけです。「いい日程」とはつまり、観客が集まりやすい日ですから、平日でも人が集まるという状況を僕らが作っていかなくてはいけない。例えば現状、同じツアーであれば一律で同じ価格設定になっているチケットに、平日割引を導入したらどうなるのか、そういった研究をライブビジネス研究プロジェクトでは進めていきたいですね。
(ここで野村さんはお仕事のため退席)
中西:大衆演劇は、平日の午前11時の部にお客さんが最も入るそうです。ミュージカルも意外と昼公演の動員がいい。それは観客層の中心が既婚の女性の方々なので、旦那さんや子供を送り出して11時からお芝居を観て、終わった後に友達同士でランチして、お買い物をして帰るというライフスタイルに合っているからなんです。コンサートも、キャリア・アーティストの公演であれば、平日の昼にお客さんが集まってくれる可能性はあると思います。
門池:それと平日の夜であれば、会社員の方も仕事の後にコンサートに来られるように、開演時間を遅らせることも必要ですよね。東京のライブハウスなどでは、当たり前になっている例も多いですが、地方の公的な会館・ホールで同じことができるかといえば、現状ではなかなか難しいでしょう。撤収を含めて22~23時までかかってしまう場合、会館側との交渉が必要になります。
中西:見落とされがちですが、地方だとお客さんが帰る電車がなくなってしまう場合もありますから。
門池:平日開催の一番の問題は物販が売りにくいことなんです。公演の前後にも、時間的な余裕がないと、販売時間が短くなってしまいますから。グッズの物販がプロダクションにとって大きな収入源である以上、そこを改善することが重要です。
中西:実はマーチャンダイジングの問題も大きいですよね。
門池:プロダクションにとっては、たとえ日本武道館でやってもコンサート一本だけだと赤字になってしまう可能性があります。だからこそ本数を増やすことでなんとか採算を取ったり、物販の収入を当てにすることになります。本当は会場費やセット・機材などの制作費を削減することで、次のツアーに向けてなんとかお金を残したいというのが本音なんですよ。この点もプロモーターの皆さんとは話し合っていきたいと思います。
中西:プロモーター側も利益率はどんどん落ちていって、各スタッフが複数の公演を同時に担当しないと回していけない状況です。こちらの本音は、アーティストが売れるまでは採算を考えずに一緒にがんばっていこうと思っていますが、いざ売れたタイミングでプロモーター側に大きなリターンがあるかといえば、なかなか難しいのが正直辛いですよね(笑)。
門池:ああ、それはライブハウスでもよく話題になりますね。売れない頃にライブハウスで一緒に、がんばってきても、売れたらもう出演しなくなっちゃうと。
中西:同じような話ですよ(笑)。
門池:人件費を含めて制作費が高騰している現実をアーティストも把握したほうがいいですね。一方でチケットの価格が大きく上がっているかといえば、1000円値上げするだけで僕らはヒヤヒヤしているわけですよね。コンサートで誰も大きく潤っていない状況を変えるためには、チケット価格についても、もう一度見直してみることが重要かもしれません。