岸谷:プリプリの再結成だけではなく、久し振りに自分のツアーを本格的に始めてみて、一番の衝撃だったのは、今は基本的にライブをやるのが週末になっていることですね。以前はツアーといえば、全国各地で平日も連続してやるのが当たり前だったじゃないですか。
中西:確かに80年代や90年代はそうでした。全体的にライブが土日に集中し始めたのは、この10年くらいのことだから。
岸谷:身体を慣らしていく意味でも、続けてやるほうがいいんですけどね。ライブを30本とか40本やる中で、最初の1~3本はキツいけど、ちょっと東京に戻って、4本目あたりから「ああ、慣れてきたねえ」とペースがつかめてきて、リハーサルを通しでやらなくても大丈夫になってくる。今はツアーといっても土日ごとに東京から各地に行く感じだから、いちいちライブの流れを思い出して、体調も整えなきゃいけない。
中西:以前はライブを観にきていたのが、学生中心だったんです。音楽は若者文化だったから。例えば大学生であれば、平日でも全然OKですよね。それが今、ライブを観にきているゾーンが30代から40代に移ってきた。皆さん働いているので、ライブは平日よりも土日に行きたいわけです。そうなると、主催者側も動員を考えて、土日に開催しようということになるんです。
岸谷:なるほどね。でも、やっぱりちょっと残念ですね。例えば昔のバンドには、ツアーのことを歌った曲がよくあったじゃないですか。プリプリでいえば「OH YEAH!」。それは10連泊とか、ずっとメンバーと一緒に旅に出ていたからこそ生まれたわけで、そういったバンドらしい曲も少なくなっちゃうと寂しい。それとスタッフや各地のプロモーターの人達と打ち上げでお酒を飲んで、その日のライブの話を語り合う時間もほとんどなくなってきているでしょう。
中西:今はそもそも若いミュージシャン自身が、お酒を飲まなくなっていますからね。世の中の風潮もそうじゃないですか。
岸谷:時代なんですね。でも、自分達の演奏が、ちゃんとお客さんに伝わっているのか不安な時は、どうすればいいんだろう? 例えばマネージャーだったら、どうしても自分のバンドはひいき目に見ちゃうでしょう。プロモーターの皆さんは身内でありながら、その日のライブを客観的に観られるいいスタンスだと思うんです。だから打ち上げの時に、客席からどう見えているのか、曲のつなぎはどうなのか、全体の流れはこれでいいのか、色々な意見を聞きたいものなんです。だから、いつも各地の担当の人に「本番、ちゃんと観ておいてね」ってお願いしていたんですよ。そういう意見を聞く機会がたくさんあったからこそ、ツアーが終わるごとに私達も成長できたと思っています。
中西:現実的には今、アーティストの担当者でも本番を観られなくなってきているんです。先ほどの話とつながるんですが、土日はライブが重なっていて、もう現場はバタバタだから。
岸谷:それと、プリプリの時代はプロモーターも暑苦しいくらい熱かったけど(笑)、最近の若い人達は、バンドと一緒に意見をぶつけ合ったり、感情を露骨に出すことが恥ずかしいんじゃないかな……。
中西:本来は、プロモーターはライブを観てナンボですから、忙しくても若い担当者が普段の業務でライブをちゃんと観ることができる環境を、会社の上の人間がつくらなきゃいけないと、今日の対談で改めて思いました。自分が担当したライブを観ないのは、アーティストに対しても失礼な話ですから。これは会社としてきちんと対応を考える必要がありますね。