大石:ライブ・エンタテインメントが活性化している一因に、フェスティバルの存在があることは間違いないですよね。
中西:もちろんそうです。
大石:プロダクションにとっても、確かにフェスの存在はありがたいですが、一方で扱いが難しくなってしまう場合もあるんです。アーティストがどういう位置にいるかによって、フェスへの対応も見極めなくてはいけない。新人の時はとにかく出演させたいですし、お世話になることが多い。売れ始めてくると、お世話にはなるのですが、「これでプロモーターの方にも、ちょっと恩返しができたかな」という気持ちになります。完全にブレイクした後だったら、きっとマネージャーは出演料の交渉を始めますよね(笑)。要するにプロダクションにとっては、お付き合いが難しい面があるんですよ。それと何より、フェスに出てしまうと、同じ年にワンマンのライブをやろうとすると、動員が割れてしまうことがありますから。
中西:それはよく分かります。だから僕らキャスティングするほうも、出演者側のプロダクションも、アーティストが今どのポジションにいるのかを明確にしないと、完全にデメリットになる場合もあります。上を目指している時は、絶対に出たほうがいいんですけれど、ちょっと下がり気味の時は、残酷な結果になってしまう。ステージの前に観客がこれしかいない、ということになりかねませんし、ワンマンのライブにもいい影響を与えないこともあるでしょう。
大石:出演さえすれば、必ずプロモーションにつながるのは初期だけですよね。
中西:そうだと思います。アーティストも、ある時期からプロモーションという意識を捨てる必要があるでしょうね。観客を本当に楽しませる気持ちがないとダメじゃないでしょうか。
大石:それとプロダクションにとってのコスト感と、フェスの出演料のバランスが正直、これでいいのかなと思っているプロダクションも少なくないと思うんです。完全にガラス張りにしてくれとはいえませんが、一緒にフェスを作っているんだという意識をベースにして、もう少し関係性をオープンにできたらなという気持ちはあります。案外アーティストって、維持するだけでお金がかかるんですよ(笑)。フェスで演奏するにも、バンドのメンバーだけで行くわけにはいかないですしね。その分を取り返そうとするワンマンと、フェスに出た時のコスト感を、うまくバランスがとれたらいいと思うんです。
中西:もともとは、そういった面をコンサート援助金という形でレコード会社が補填してくれていたわけですよね。それが時代の流れで変わってしまった以上、プロダクションとプロモーターで、フェスの在り方をもう一度考える必要はあると思います。