中西:先日も実は加藤さんと一緒に、たまたま某俳優さんと語り合う機会がありましたが、他のジャンルの方でも、音楽に熱い思いを持っていることがわかって、うれしかったんです。その時「ああ、この俳優さんがセレクトする音楽も聴いてみたいな」と思いました。
加藤:誰がどんな音楽を聴いているかは、気になりますよね。その最たるものがランキングやチャートだと思うんです。レコチョクではダウンロード販売だけではなく、スマートフォン対応の定額制聴き放題サービスも始めていますが、そのサービス名を「レコチョクBest」としました。これは10万曲以上あるJ-POPの楽曲の中で「何を聴いていいのかわからない」というお客様のために、「それならこの曲を聴いてください。すごくいい曲ですよ」「このアーティストが気になるなら、まずこの10曲を聴いてみてください」とレコメンドする機能が付いているのが特徴で、だから「ベスト」なんです。
中西:確かに日本人は「ベスト」という言葉に弱いですからね(笑)。
加藤:例えば僕が「昭和35年生まれ」と画面に入力すると、「あなたが10代で聴いていたベスト10はこの楽曲です」とトップに出てくるんです。それで懐かしさを感じていただいて、そのうちの何曲かを聴いていただきますよね。次に履歴の傾向をこちらで分析して、「だったら、こういう曲もいいですよ」と常時レコメンドを続ける機能なども今後備える予定です。
中西:それならばシニア層の開拓にも有効利用できますね。それをコンサートの動員とどうリンクさせるかは、僕らが考えなくてはいけない。
加藤:弊社ではeコマース事業も展開していまして、売上はお陰様で伸びています。普通に考えれば、CDの通販では主にアマゾンさんへ行くというお客様が多いと思いますが、なぜ多少なりとも売上が伸びているかというと、音楽配信の購入者の方々に、「このアーティストの新譜がリリースされました。CDでも聴いてみませんか」とピンポイントでレコメンド・メールをお送りしているからなんです。例えばそこにコンサート情報をプラスしてもいいかも知れません。
中西:今日のお話をまとめると、デジタル・コンテンツにアナログ的な発想を合体させると、お互いの良さが活きてくるということですよね。音楽配信とライブ・エンタテインメントの連動もそうですし。
加藤:おっしゃる通りです。自虐的にいうと、僕らはこれまで本当の意味での音楽配信をやってこなかったともいえると思います。例えば着うたは、音楽ビジネスというより、どちらかといえば「サウンド・デコレーション」としての楽しみ方を提供し、自然にお客さんが増殖してきたものだと分析しています。だから社内では「これから本当の意味での音楽配信をやるぞ」とよく話しているんです。今がまさに、アナログ的な発想を活かしつつ、新しいスタートを切るべきタイミングなのだと思います。