A中西:今、野外フェスティバルはほとんどそうなっていますが、会場での楽しみ方も音楽だけではない、トータルなものです。美味しいものを食べたり、テントでキャンプしたり。1日そこで過ごすことの中に、アーティストのベスト盤的ライブがセットになっている感じなんです。
J中西:Jリーグでも、会場に長くいられることは大事なんですよ。試合は90分ですが、お客様のスタジアムでの滞在時間が長いチームほど、観客動員数も多い。スタジアムで過ごすこと自体を楽しめると、やっぱりお客様は足を運んでくださるんです。データを見ると、一番長いのが川崎フロンターレの5時間でしたね。
A中西:確かに僕から見ても、フロンターレは最も地元に密着しているチームだと思います。
J中西:スタジアムの概念を変えていくために、Jリーグはまず、規約で使われている言葉から変えました。もともとの規約の言葉は「競技場」でしたが、「スタジアム」にしたんです。競技だけをするところではなく、コミュニケーションの場なんだという思いを込めたわけです。言葉から変えていかないと、スタッフもイメージできませんから。Jリーグは発足の時から、言葉にはこだわってきたんです。例えば「フランチャイズ」ではなく、「ホームタウン」と呼んだことが代表的な例ですね。フランチャイズはビジネスをする側の権益を示す意味もありますから、地元からの目線で使える言葉に変えたんです。
A中西:ヨーロッパなどでは、スタジアムはある種の社交場になっていますよね。
J中西:サッカースタジアムの運営で最も進んでいるのは、ドイツですね。あらゆる施設を併設しています。ホテルも併設していますし、商談の場として会議室やラウンジも使える。ピッチが見えるところで商談をして、話がまとまったらシャンパンで乾杯するわけです。自治体の出張所も入っていて、市民は住民票を取りにきたりしますので、スタジアムが身近になるんです。
A中西:試合がない日も、併設された施設は営業しているわけですね。
J中西:アメリカでスタジアムを建てている関係者も面白いことをいっていました。「フットボールをやるためにスタジアムをつくるわけじゃない。この街の再開発のためにスタジアムが必要なんだ」と。
A中西:今までのスタジアムが競技を見るためのものだったとすると、第2段階ではスタジアム自体を楽しむためのものになって、第3段階では街全体を活性化させるものになるということですね。
J中西:日本でもサッカースタジアムは、週に1回しか使わないじゃないですか。試合があるのは週に1回ですから。それ以外にどうスタジアムを使っていくかという点では、我々もまだまだやらなくてはいけないことがあると思っています。
A中西:そこは、僕たちもお手伝いできると思います。スタジアムの利用法を一緒に考えると面白いかも知れませんね。音楽だけでもできない、サッカーだけでもできないことを、ぜひ一緒にトライしたいですね。