会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

音楽特有の価値

村松:日本レコード協会の会長という立場からレコ協が毎年実施しているユーザー調査をベースにお話しすると、日本にはゲームやアニメなどたくさんのコンテンツがあり、チャンスも広がっている中で、音楽に対する無関心層が増えているんですね。そのデータを踏まえた上で、音楽コンテンツの価値を改めて高めていきたいと強く思っています。海外への発信だけではなく、国内の需要も喚起したいし、若者に音楽の素晴らしさを知ってもらいたい。自分達の青春時代を思い返すと、あらゆるシーンに音楽は流れていました。音楽は他のコンテンツと違う面があって、同じ映画や小説を10回以上繰り返し楽しむ人は少ないですが、音楽は同じ曲を100回、1000回と聴く人がいくらでもいるじゃないですか。そう考えると自分達の生活を演出する音楽というコンテンツの素晴らしさが分かると思うんです。MUSIC AWARDS JAPANでも、そういった音楽特有の価値を伝えていきたいですね。僕らが小学生の頃、沢田研二さんが各音楽賞を受賞するのかしないのか、ワクワクして、その日が待ち遠しくてしょうがなかった。そのワクワク感は大事だと思うんです。

本当の意味でフェアな、世界に発信するアワードにしたいと思います。
中西健夫
コンサートプロモーターズ協会会長

中西:沢田研二さんは今もコンサートを精力的にやられていて、僕らは何度も感動しているわけですしね。

村松:MUSIC AWARDS JAPANはおそらく1万人近いアーティストや音楽業界のスタッフが投票メンバーになるので、公明正大かつ、誰もが納得するような賞をお贈りできると思うんです。その年を代表する曲であり、新人を含めたアーティスト、世界で受け入れられた日本の音楽、逆に日本で受け入れられた世界の音楽などが一堂に会して、分かりやすくエンタテインメントとして紹介できる場になるといいですね。自分が生きている間にこんなアワードが実現するのはうれしいですし、ぜひ力を尽くしたいと思います。

中西:MUSIC AWARDS JAPANの構想が動き出したのは、都倉俊一文化庁長官の存在も大きいですよね。作曲家でもある都倉長官が、初めて我々のポピュラー・ミュージックの業界から長官に就任されて、音楽5団体のメンバーもお話しさせていただく機会が増えましたが、「これはやるべきだ。いや、やらねばならない」くらい前向きに応援してくださっています。文化庁が京都に移転したこともあり、開催地が京都に決まり、本当に国を挙げてやっていくような形が見えてきました。

新しく。そして頼もしく

村松:基本はその1年間で最も支持された楽曲、アーティストを公正に表彰するということになります。

中西:2025年5月開催の第1回では、2024年2月から2025年1月のデータが対象です。

村松:アワードの模様は地上波での放送を予定しています。世界へ届けるためにグローバル・プラットフォームでの配信も実施する予定ですし、観ていただく方のために非常に斬新な演出であるべきだと考えています。アワードといっても、形式ばったものにするつもりはありませんが、一方で登場するアーティスト達と日本の音楽界が世界から見ても頼もしく思えるくらいのものにしたいと思っています。

中西:日本の音楽をずっと支えてきてくれたアーティスト達に対しても、どのような形でリスペクトを捧げるべきかは検討中です。またアーティストだけではなく、音楽界に貢献してくれたスタッフも対象に加えられたら良いなと考えています。グラミー賞で一番感銘を受けたのは、まさにその部分でした。それとライブ、コンサートについても、何かしらの形でアワードに加えたいと思っています。グラミー賞が我々のモデルケースになっているのは事実ですが、第1回目から60年を超える歴史があるグラミーと同じようにはできないですから、あまり詰め込みすぎないようにと気をつけています。

村松:まずはやってみようというところからのスタートですよね。これまでの日本におけるアワードは、メディアが主体になっている場合が多かったのですが、MUSIC AWARDS JAPANはアーティスト自身や業界当事者からリスペクトされているアーティスト、実績を残した作品を表彰することが主眼です。そこがグラミー賞との共通点ですよね。我々の業界のために、ハンドメイドというかホームメイドで開催するアワードが、今まで日本になかったのが不思議なくらいだとも言えますが、だからこそ使命感を持ってやらなくてはいけないという意識があります。基本のスタンスは「まずは、やる。そして時間をかけて育てる」ですね。このアワードによって我々が利益を直接的に得るなんてことは毛頭考えていませんので、まずはアーティストとこの業界で生きている人達、そして音楽コンテンツをしっかり称え合う。それを世の中の皆さんに伝えるということだと思います。


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