会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

屋内スポーツ、空間プロデュース

バスケットボールは空間プロデュースによる
ライブ・エンタテインメントだと思います。
中西健夫
コンサートプロモーターズ協会会長

中西:バスケットボールが屋内スポーツであることは、大きな利点ですよね。演出によって、空間をつくりやすい。バスケットボールは空間プロデュースによるライブ・エンタテインメントだと思います。そういった意味では、コンサートに携わる人間にとっても学ぶべきところが多いでしょう。2016年に開催された代々木第一体育館での開幕戦は、僕も観に行きましたが、特に凝った演出をやっていましたよね。試合以外に楽しめる要素がたくさんありました。DJによる演出が耳から入って、照明の中で試合を観る。聴覚と視覚がフル稼働して、一体感が出るんですよ。

島田:会場の雰囲気づくりはNBAを参考にしているという前提はありますが、日本独自の歴史的背景もあるんです。やっぱり日本では、長い間バスケットボールはマイナー・スポーツだったんですよ。会場は市民体育館で、ヘタをすれば「靴を脱いで入ってください」ということもありました。華やかな雰囲気ではなかったですし、選手の顔も知られていない。少しでも楽しんでいただけるような工夫をしないと、リピートしてくれない。固定ファンも含めて繰り返し会場に足を運んでもらおうとしたら、試合以外の楽しさを取り入れるのは絶対条件です。そんな中で川淵さんがB.LEAGUEを立ち上げて、各クラブがホームアリーナでの興行に力を入れるようになり、企業努力がようやく実りだして今があるんです。

中西:コンサートプロモーターと似ていると思うのは、僕らが手がけているフェスは当初、音楽しかコンテンツがなかったんです。フェスとはイコール、音楽フェスでした。でも、20年続けていこうと思ったら、それだけでは足りないんですよ。どういう飲食を入れたほうがいいのか、会場内の演出をどうするのか、会場をフルに使って魅力をアピールしていく必要が出てくる。そこに気づくかどうかが大事なんです。

島田:おっしゃる通りですね。

中西:B.LEAGUEは今、空間プロデュースだけではなく、ワールドカップで誰もが知っているスター選手も誕生して、メジャー感も出てきているわけですから、理想的じゃないですか。やはり日本代表が強くなるというのは大事なんですね。

島田:日本代表がワールドカップという場で結果を出したことはこれまでなかったですし、そもそも代表戦が地上波のテレビ中継で放送されるような状況もなかったですからね。放映権の話を持って行っても、以前であれば箸にも棒にもかからなかったと思いますが、今回は放送局の皆さんがリスクをとってくださって実現したんです。これでコケたら、どうしようと思っていましたが、ああいう結果を残せて、視聴率もよくて……色々な歯車がいい形で噛み合いました。

中西:試合内容までドラマティックで。運、持っていますね。島田チェアマンが持っているんですよ(笑)。

島田:いやいや、私ではありません(笑)。川淵さんだと思います。

各地のアリーナ新設

中西:B.LEAGUEのクラブによるアリーナの設立推進は、とても素晴らしい動きだと思います。各クラブのホームタウンにできていくわけですから、その点が特にライブ・エンタテインメント業界にとっても大きなプラスです。地方でのスタジアム・アリーナ構想は、これまでどうしても行政とのやり取りでしか進められない部分がありました。今は行政もいい方向に動いてきていますし、さらに民間も加わりました。来年(2024年秋)開業予定の長崎スタジアムシティなどは、規模感も含めて本当に楽しみですよね。街おこしどころじゃなくて、長崎に一つの街をつくるくらいのイメージで話が進んでいます。髙田旭人(ジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEO/B.LEAGUEの長崎ヴェルカ代表取締役会長)さんをはじめ、若い経営者がどんどん新しい発想をしていくところがワクワクします。

島田:アリーナの新設については、確かにB.LEAGUEの誕生以降、流れが完全に変わりました。自治体だけでは難しかったところを、地域の方や民間の資金も含めて選択肢が増えて、大きく前進したと思います。ただハコがあっても利活用されなかったら意味がないので、じゃあそこまで投資をするのであれば、せっかくできた会場も利活用されないと意味がないよね、だとしたらコンサートにも適したものに……という発想が当たり前になってきました。自治体やステークホルダーの皆様に、稼働率を上げていくための視点が出てきた。結果的に、B.LEAGUEの誕生からいい流れが生まれたと思います。

中西:SAGAアリーナも盛り上がっていますしね。とにかく新設されたスタジアム・アリーナが、これからも継続して利益が出せる会場になることが一番大切ですので、お互いにウィンウィンの関係を保っていくために、コミュニケーションをとり続けていきたいと思います。さらにいえば、我々のコンサートだけではなく、催事や展示会などに大きな利益をもたらすものもあるかもしれませんので、様々な可能性を探ってほしいですね。「バスケットボールと音楽」だけではなく、さらに選択肢を増やしていくような。

島田:会場だけの問題ではなく、経済効果は地域に波及しますからね。佐賀ではアリーナのオープンによって駅前に人だかりができたり、ホテルがとれないような状況が生まれたそうです。沖縄ではワールドカップの開催を含めて大きな経済効果がありました。そういったことを踏まえると、音楽とスポーツ、両方で使い勝手がいい会場を模索するのは絶対条件だと思います。

中西:今後、ミュージシャンのバスケ好きが増えていくと思うんですよ。今まではサッカーファンが圧倒的に多かったと思いますが、バスケの人気も上がって、ミュージシャン主導のコラボも生まれて、次のステップが見えてくる気がするんですよね。


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