中西:楠本さんがお仕事をされている方で、楠本さんが好きそうな人は、僕もなんとなく好きになれそうだという実感があるんです。それと初めてお会いした時に、一番印象に残ったのは楠本さんが「僕はカフェをつくっているつもりはないんです。つくらなくてはいけないのは文化です」とおっしゃったことでした。
楠本:そんな偉そうなことを言いましたか?(笑)
中西:直接的な言い方ではなかったかもしれませんが(笑)、ああそうかと僕にはすごく印象に残りました。僕らが携わっている音楽も、聴く人によって好みが分かれる嗜好物だと定義することもできますが、それを文化にしていかなきゃいけないと改めて感じたんです。じゃあ、どうやって文化にするのかと考えると、色々な業種とのコラボレーションも一つの道かもしれない。僕らが知り合ったのはまだまだこれからという時代でしたが、ここ数年は他業種とのコラボだけではなく、企業の合併も始まって、業態の枠組もガラッと変わってきましたから。
楠本:WIRED CAFEは異文化が交差する象徴のような存在にしたいと思って始めたんです。そういった意味でも、僕らにとって本当に音楽は大事なんですよ。店をオープンする際、メニューより流す音楽のことばかり考えていたくらいです。音楽とカフェはそれくらい近いし、店に置かれている本も重要です。僕は食とファッション、あるいは生活空間、デザイン、アート、音楽をどうやって一つに融合させようかということばかり考えてきました。
中西:そういった発想は僕もすごく近いですね。
楠本:今は例えばアパレル企業でカフェを始める会社はすごく多いですし、幅広いジャンルの企業がライフスタイル提案型になっています。色々なものをインターネット化していくと、リアルな物流、リアルなライフスタイルが大切になってきますし、インターネット化する意味を問われてきます。そんな時こそ開発者側がライフスタイルの先鞭をつけていないと、提案型のビジネスはできないということになりますよね。わかりやすく言うと、センスよく遊んでいないと未来が見えない時代になってきていると思います。服をつくっていても、その服を着る人がどういう音楽をセレクトするかまで視野に入れなくてはいけない。食も音楽もファッションもインテリアも含めた、ライフスタイル全体を提案できることが重要なんです。