中西:僕は今年の2月、グラミー賞の授賞式を現地へ観に行ったのですが、改めて素晴らしいイベントだと思いました。アメリカにはあのようなイベントがあるということ自体、うらやましくなりました。
朝妻:アメリカの音楽業界全体が協力し合って、あの伝統的なイベントの価値を守っていることは確かです。分岐点になったのは、1971年に授賞式をテレビで生放送するようになった時でしょうね。以降、グラミー賞を主催するNARAS(ナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス)は、テレビ局と組んで、どうしたら視聴率が取れる番組になるか、ショーとしての側面をよく考えていると思います。
中西:テレビ番組という側面だけではなく、実際に現地に行くと分かりますが、ロサンゼルスという街全体をあげてのイベントなんですね。街を行き交う人達がドレスアップした姿を見ると、楽しさが伝わってきますし、それだけで感動しました。
朝妻:グラミー賞はもともと、59年にハリウッドの商工会議所が始めているんです。ハリウッド大通りのウォーク・オブ・フェームに誰の名前を入れるか、相談するところからスタートしたそうです。途中、開催地がニューヨークになったり、ナッシュビルになったりしましたが、基本的には最初からずっと街に密着したイベントだったんじゃないでしょうか。
中西:ある種の街おこしみたいなものなんですね。さっき「うらやましい」といいましたが、僕は単純に日本にもこんなイベントがあればいいのにと思いました。日本にも様々な音楽賞がありますが、その上ですべてを統括したような賞があると、それこそヒットを生み出す役割を果たしてくれるんじゃないかと思います。
朝妻:確かにグラミー賞はヒットを生み出す場として、アメリカ最大のものでしょうね。ただ、コマーシャルになりすぎていることへの批判の声があることも確かです。中西 価値が高いからこそ、アンチも出てくるんでしょうね。
朝妻:それだけのステイタスを維持していますから。
中西:身近な例で考えると、一昨年、さだまさしさんが通算4000回のライブを終えられて、ACPCから表彰させていただいたんです。ひと言で「4000回」といっても大変な偉業ですので、もっと大きな場で表彰式ができたらと強く思いました。
朝妻:業界内の認知だけではなく、アーティストの素晴らしさ、功績を広く一般にも知っていただくことは大切ですよ。そのためにはやっぱりヒット曲が大事だということになって、またヒット曲をどうやって生み出すかの話に戻っちゃいますが……。
中西:ヒット曲が生まれにくい時代に、どうやってヒットを出すか、ですね。