堀:本来、演歌を支えてきた層は全国に広がっていたはずなんです。地方の駅前の繁華街には小さなスナックがたくさんあって、演歌の好きなお客さんがカラオケを楽しんでいました。歌手はそこにキャンペーンに行き、プロモーションをしていたわけです。今は繁華街すらなくなってしまって、全国どこでも同じようなショッピングモールができています。
中西:この対談でもよく話しているのですが、各地域の特色が失われていくことは、本当にACPCにとっても大きな問題なんです。文化が東京に一極集中している現状をなんとかしなくてはいけない。
堀:演歌だけではなく、文化や娯楽全体の6割から7割が、東京で消費されているわけですからね。演劇に関しても、地方公演は激減しているんじゃないでしょうか。大阪でも動員が厳しいです。大衆演劇などは、もともと地方のホテルに1カ月間泊まり込んで公演を続けるスタイルでしたが、今は劇団が宿泊できる規模のホテルそのものが少なくなりましたね。公演を買ってくれていた地方のホールでも、文化に使える予算が削減されています。
中西:コンサートにしろ、演劇にしろ、とにかく観て聴いていただかないことには始まらないわけですからね。地方公演の開催自体が貴重な機会だと考えると、今までチケットがソールドアウトしたことを誇らしげに語ってきたのは間違いだったという気がしてきます。それは単に自己満足で、売り逃がしていただけだったんじゃないかと。ソールドアウトしたら、無理をしてでも追加公演をやって、そのアーティストに少なからず興味をもってくれているお客様を漏れなく満足させなくてはいけない。それで初めて次も足を運んでいただける可能性が生まれるわけですから。次に地元で公演が行われる日まで、ファンが黙って待ち続けてくれる時代ではもうないかも知れません。できる時にできることをやっておかないと。