中西:最近はプロダクションとプロモーターを、これまでのカテゴリーで分けることに、それほど大きな意味がなくなってきましたよね。実際にプロダクションの方がプロモーター的な動きをしている場合も多いですし、プロモーターがプロダクションをやっているケースもある。アーティストごとに、コンサートを作り上げる座組が違うといってもいいくらいです。
大石:レコード会社とプロダクションの関係もそうなってきました。インディーズを含めれば、もともとプロダクションがレーベルを持っているケースも多いですし、最近は逆にレコード会社がマーチャンダイジングを手掛けることもある。もっといえば、レコード会社との契約で興行権の話が出てくることもあります。本当にケース・バイ・ケースで、これをやってはいけないという決まりはなくなりましたね。
中西:こういう時代になると、プロダクションとレコード会社、プロモーターが、あるアーティストを売り出すために集まって、どういった形でリスクを分担するのかをフラットに話し合い、それに応じた利益のシェアを考えることも必要になってくるでしょう。
大石:音楽産業は構造的に、レコード会社が大部分の売上をコントロールしていた時代が長かったわけですよね。資金的にもレコード会社の蓄財が背景にあったからこそ、新人アーティストに資金を投下できた。それがCDよりライブ・エンタテインメントに勢いがある時代になって、次の世代のアーティストを支える役割も移り変わってきていると思います。
中西:アーティストを支えていくという意味では、日々の業務でもプロモーターの役割にバリエーションが求められるようになったと思います。一人ひとりのスタッフが何を提供できるかが、大事になってきました。例えばコンサート運営のプロになるのであれば、それでもいいんですよ。プロダクションにはできないことを、一つでもちゃんと持っていれば。すでに売れているアーティストにとっては、完璧な運営のプロが必要じゃないですか。これから売り出すアーティストであれば、一緒に悩んでくれるスタッフが求められるかも知れませんし。
大石:今は例えば宣伝もレコード会社よりプロモーターの方がアクティブな場合もあるわけですよね。売れているアーティストのコンサート会場に、新人のフライヤーを置いてくださいといったオーダーもあるでしょう。メディアが強かった時代にはなかったやり方だと思いますが、今はライブの現場とか、人と人が触れ合う場面が、一番の宣伝効果を持っているともいえますから。