会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

音制連、ACPC、そしてオールジャパン 2つの団体の絆が強くなった理由

撮影:宇都宮輝

「業界側がもっとチケット不正転売禁止法を理解する必要がありますよね」(中西)
「特定チケットとは何か?を伝える役割をチケット適正流通協議会が担います」(野村)

日本音楽制作者連盟(以下、音制連)もACPCも、30年以上に及ぶ歴史がありますが、これまでの歩みの中でも、現在が最も強い絆で結ばれていると言えるのではないでしょうか。両団体が同じテーブルに着く機会が増えたことの延長線上に、チケット不正転売禁止法の成立と施行があり、アライアンスが政治、スポーツ、演劇の世界にも広がっていった潮流があります。一方で「団結しなくては到底解決し得ない難問」の数々が今なお横たわっていることも事実。音制連の野村達矢新理事長をお招きして、中西健夫ACPC会長が「私達は次に何をするべきか」を深く語り合います。

第一歩を記した自分達が まず法律を理解すること

中西:理事長就任、おめでとうございます。これまでも野村さんとはお話をする機会が多かったですが、改めてよろしくお願いいたします。

野村:こちらこそ、よろしくお願いいたします。音楽産業の中心がライブ・エンタテインメントへ移行して、音制連としてはますますACPCさんとの連携が必要になってくるだろうということで、定期的な連絡会議の開催を中西さんと相談し始めたのが2016年の初頭でした。その中で課題として挙がっていたのは、チケットの高額転売だけではなく、会場でのアルバイト不足、制作費の問題、コンサートの開催が土日に集中しすぎている点など、いくつかありましたが「まずはチケット問題ですよね」という共通認識が明確になっていきました。

中西:ACPCが立ち上げたライブ・エンタテインメント議員連盟も、2012年の設立当初は会場不足問題などを取り上げていましたが、2015年頃からチケットの高額転売が浮上して。

野村:一気にエネルギーを集中して動き出しました。

中西:そのくらい音楽業界の仲間も、音楽ファンの皆さんも頭にきていたということですよ(笑)。

野村:チケット不正転売禁止法が成立した経緯を振り返ると、ACPCと音制連という2団体の強力タッグからすべてがスタートしたところが良かったと思うんです。そこに音事協の皆さんも加わっていただき、コンピュータ・チケッティング協議会も参加してくださった。それまでセパレートされていたメンバーが顔を合わせて、一気に同じ方向を向いたことで、数倍のパワーが生まれたんじゃないでしょうか。さらに新聞広告を出したことで民意が動いて、政治の世界にも問題意識が広がっていったという図式でした。

中西:この短期間で議員立法まで到達したのは、東京オリンピック・パラリンピックの追い風も大きかったですよね。それと日本2.5次元ミュージカル協会や劇場運営者の方々、プロ野球もJリーグの皆さんも同じ問題意識を持っていたことが分かりました。そのきっかけが音楽業界から始まったことは重要です。

野村:改めてその点は本当に良かったと思います。次はまた違うオールジャパンで、日本の音楽エンタテインメントのために何ができるか、何をすべきかを考えていくことも大事ですよね。

中西:違法ダウンロードをはじめ、タダで音楽を聴こうとする違法な市場は今も歴然と存在します。音楽をつくっている人へのリスペクトが全く感じられない、本当にひどい状態がそこにはある。ストリーミングの時代になって、あっという間に違法なものが主流になっていく。このスピードに既存の法律は到底追いつけないので、今、何が問題になっているかを把握して、とにかく素早く動かないとダメだと思いますね。

野村:特にインターネット上では、リーガルなものとイリーガルなものの区別がつきにくいですから、ユーザーに対してちゃんと啓蒙していくというか、情報を伝えていかないといけない。チケットの問題でいえば、今後はチケット適正流通協議会がその役割を担っていくことになります。協議会が定める運用基準に準拠した正規のチケット販売事業者、二次流通サービス事業者には、FT(フェアチケッティング)マークを発行しますので、安心してチケットを購入できるかどうかの目安になるよう掲示してもらえればと思います。

中西:この「ACPC navi」でも、チケット不正転売禁止法のことは何度も取り上げられているので重複すると思いますが、特定興行入場券に指定しないと今回の法律の対象にならないんです。特定興行入場券という名称がちょっと難しいので、今後は「特定チケット」という通称に統一しますが、特定チケットとして認められる条件を理解して、それに則らない限り、基本的には今回の法律の適用外になってしまう。この点は声を大にして言いたいですね。チケット適正流通協議会のホームページにも、マニュアルを掲載していきますので、ぜひチェックしてください(「特定チケットとは?」は今号の8ページにも掲載。Web版は下記リンクを参照ください)。プレイガイドとプロダクションとプロモーター、三者がきちんと理解しておく必要がありますので。

特定チケットとは?:http://acpc.takumiworks.net/magazine/navi_issue.php?topic_id=338&page=2


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