左・中西大介 Daisuke Nakanishi:公益社団法人日本プロサッカーリーグ理事/競技・事業統括本部 本部長
右・中西健夫 Takeo Nakanishi:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長/株式会社ディスクガレージ代表取締役社長
撮影:小嶋秀雄
同じ「ライブ」を提供するもの同士 地域に根ざした組織を持つもの同志
ACPCの組織はJリーグと似ている。同じライブ・エンタテインメントを扱う立場として学ぶべき点も多い—中西健夫ACPC会長による連載対談第2回は、コアなサッカー・ファンを自認する会長自身の発想から人選が決まりました。中西会長が指名したゲストは、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の理事であり、競技・事業統括本部長を務める中西大介さん。日頃から交流がある2人の「W中西対談」となりましたが、個人的な共通項以上に「ACPCとJリーグ」「音楽とサッカー」には重なる部分が多く、トークは新たなコラボレーションの実現を予感させる内容になりました。
「私たちの仕事は週末にJリーグの試合があるライフスタイルを提供すること」
「僕たちはライブスタイルをライフスタイルにしてもらうのが仕事です」
中西ACPC会長(以下、A中西):ACPCは全国のコンサートプロモーターの組織ですから、全国のチームが地域に根ざした活動をしているJリーグと共通点が多いと思います。まず、Jリーグが選手育成と地域振興を一体化させて行っている理由から教えてください。
中西Jリーグ理事(以下、J中西):最終的な目標が世界に通用する選手やチームを育成することだとすると、地域に根ざすことが一番の近道なんです。地域に密着したチームが、お互いにいい意味での競争をして、日本全体のレベルを上げていく。それがまた地域に還元されるという流れが、一見、遠回りのように感じるかも知れませんが、実は近道なんです。「世界」のために「地域」に力を入れることは、決して矛盾していないんですよ。
A中西:それも音楽と同じですね。確かに地域に根づいていくことが、世界に通用するアーティストを育てることにつながると思います。
J中西:Jリーグは、地域と世界を直接結びつけるんです。先日、名古屋グランパスがタイのブリーラム・ユナイテッドというチームと試合をしましたが、これも名古屋とバンコクの都市同士の交流から実現しています。国同士でもなく、企業同士でもない。地域に根ざして活動しているチーム同士のつながりです。
A中西:世界進出は、まさに今年の音楽業界の共通テーマなんです。都市同士の交流を含めて、その点でもJリーグのやり方を参考にするべきですね。
J中西:世界を意識することは、サッカーというスポーツの特色だと思います。世界で認められないと国内でも認められないという宿命を背負っていますから。日本のプロスポーツには、私たちの先輩にあたるプロ野球がありますが、Jリーグと比較すると圧倒的に試合数、興行数が多いんです。興行数が3分の1か4分の1ということになると、当然、選手の年俸も同じレベルを維持するのは難しくなります。だから必然的に、それを補う意味で世界に出ていかなくてはいけない。サッカーが常に世界を見据えているのは、本来は弱みになってしまうところを、世界200カ国以上でプレーされているという背景を活かして、強みに変えようとする動きなのかも知れません。
A中西:国策として韓国のアーティストが世界へ次々と進出している中で、日本のアーティストならではの良さをうまく伝えられたらとは思っています。ただし、難しいのは、やっぱり言葉の壁ですね。繊細な歌詞の魅力が届かないのは残念です。その点、サッカーはボールが共通言語ですから。
J中西:いちファンである私から見ても、日本の音楽はアジアのマーケットで可能性を持っていると思います。やはり音楽もドメスティックなマーケットだけを意識していたら、ドメスティックなマーケットでも認められないという面があると思いますし。Jリーグも試合の中継番組の販売などで、アジアをターゲットにしていますから、そこは音楽業界の皆さんと何か一緒にできればと思います。おそらく一緒に出ていったほうが、相乗効果があるんじゃないかなと。