大阪府立国際会議場（グランキューブ大阪）
「大規模接種センター」措置による
ライブ・エンタテインメントへの多大な影響

昨年の2月24日以降、新型コロナウィルスの影響で、ライブ・エンタテインメント産業は前年比80％以上の売上減という壊滅的な打撃を受けていますが、そんな中、大阪で新たな問題が起きました。防衛省・自衛隊による大阪大規模接種センターの会場に大阪府立国際会議場（グランキューブ大阪）が指定され、5月24日から約3ヵ月間の予定で使用されることになったのです。そのこと自体はワクチン接種のできるだけ早い進行が求められている昨今、なんの問題もありませんが、驚くべきは同会場でのコンサートやイベントの実施がすでに発表されており、チケットの購入を終えたお客様もいた公演の主催者側（コンサートプロモーターやアーティスト他）に事前の告知もなく、経済的損失の補償に対する説明もないまま、多くの関係者が報道によって第一報を知ったことです。

在阪のコンサートプロモーターは、キョードー関西グループ、グリーンズコーポレーション、サウンドクリエーター、夢番地、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会関西部会の連名で要望書を提出。宛先は同会場が府立であるため大阪府知事、そして運営会社の大阪国際会議場です。要望書では同会場が大阪大規模接種センターに定められた経緯説明、公演主催者に事前の説明がなかった理由、経済的損失を計上した上での補償措置などを求めていますが、改めて在阪プロモーターが集まり、行政側との交渉を担当しているACPCの長井延裕常務理事も同席し、今回の問題について話し合いました。

プロモーターもアーティストも
ニュースでその事実を知り
混乱が始まった

今回のグランキューブ大阪（以下、グランキューブ）の問題は、当初どういった経緯で把握されたのでしょうか。

上田突然、うちのスタッフに文書が届いたんです。国がグランキューブにワクチンの接種会場を設置すると。僕は出社していなかったので、連絡がきて知りました。最初に聞いた時、グランキューブにはホールと会議場がありますので、てっきり会議場を使うのだろうと思っていたのですが、ホールを含めて接種会場にすると聞いて驚きました。本当に「いやいや、ちょっと待ってよ」という感じです。大阪で急激に感染者が増えていた時期で、会社に出社していないスタッフも多かったので混乱しましたよね。

鏡４月末、ゴールデンウィークの前でしたね。グランキューブを押さえていたスタッフには、事前にメールは入っていたのですが、「接種会場の候補に挙がっている」という内容で、決定するかどうかはまだ先の話だろうと思っていたのですが……突然、決定のニュースが流れてとまどいました。

齋藤うちも同じ状況です。公演担当者のところに「ワクチンの接種会場の候補になっている」というメールはきていましたが、その後、正式なインフォメーションがある前に報道で知りました。

上田もちろん今、ワクチン接種が世の中全体にとってどれだけ重要かは重々承知していますし、常識的な経緯で要請があればもちろん全面協力したいと思います。でも今回は、コンサートを間近に控えた我々に事前の正式通知は何もなく、プロモーター側もアーティスト側も同時にニュースで知ったような状態になってしまったわけです。当然アーティスト側から問い合わせの連絡がありましたし、お客さんからもありましたが、我々も詳細を把握していないし、説明もできない。こんなことをやってしまったら、多くの人に大変な迷惑がかかってしまうというリアリティを、国も府も全く理解していなかったのでしょう。

岡田ワクチン接種の対象期間は5月24日から3ヵ月で、その1週間前から準備のためにグランキューブが使えなくなったわけです。その間、行われる予定だったのは約25公演ですから、当然損害も大きいですし、混乱しますよね。

齋藤既に開催が発表されていて、経費が発生しているもので25公演ですから、告知をしてないものも含めると30公演以上でした。

長井全国的にもこれは稀なケースなんです。群馬で個別の公演に対して要請があったくらいですし、東京では国からの要請を会場、あるいは民間の指定管理者が「それはさすがに無理でしょう」と断ったケースがいくつかあったと聞いています。大阪について言えば、どう考えても大規模なワクチン接種を行える場所がクランキューブしかなかったわけではないと思います。いくつか選択肢があったにもかかわらず、通常であれば民間の事業者が使用し、経済活動を行っている場所を国や府が急遽取り上げ、事業をストップさせたわけですから、それなりの補償があって当然だと思います。ワクチン接種自体は無事に行われて欲しいですし、そこは事を荒立てる気は全くないのですが、「ごく普通のことを当たり前にやっていただけませんか」とは強く思っています。