アーティストがいて、ステージをプロデュースするスタッフも揃い、自前の劇場を備えながら、他の地域や海外での公演の道もある—ライブ・エンタテインメントを生み出す企業としては理想的ともいえるインフラを持つのが、ACPCに新たに加盟した梅田芸術劇場です。阪急阪神東宝グループの一員である同社の幅広い業務と、日本のライブ・エンタテインメントの未来について、小川友次代表取締役社長に伺いました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
新加盟社紹介
梅田芸術劇場
受け継がれてきた理念
弊社は阪急電鉄の100%出資会社ですが、母体である阪急には宝塚歌劇団がありますし、企業グループの中にはプロ野球チームを持つ阪神があり、映画会社である東宝もグループの一員です。そういった環境のもと、関西エリアから芸術・文化を発信することをコンセプトに、(株)梅田芸術劇場はメインホールとシアター・ドラマシティという2つのホールを運営する会社として2005年にスタートしました。
弊社のエンタテインメント、大衆芸術に対する考え方のベースには、やはり阪急の創始者である小林一三翁の理念があると思います。一三翁が創設した宝塚歌劇団も、アーティストの育成から、作品の制作・演出、振付や音楽制作、劇場運営まで、すべて自前で行なう劇団ですが、私達も年間10本前後の舞台を自社内で企画・制作・興行し、自社の2つのホールだけではなく、東京での公演をプロデュースすることもあります。また、『エリザベート』や『ロミオ&ジュリエット』のような海外とのコラボレーションも企画しています。
ただし、唯我独尊にならないように、常に新しいことにチャレンジをしていかなくてはいけないという気持ちも強く持っています。海外の作品を招聘したり、ワシントン在住の著名な男性ダンサーと、弊社のアーティスト・マネージメントの部門に所属する宝塚OG中心のメンバーがコラボレーションする舞台を企画しているのは、ある種のオリジナリティを創出するためでもあります。
「文化の民度」のために
現在はインターネットで世界中のエンタテインメントを楽しめることもあり、お客様の目も肥えてきていますので、今後はやはり世界で通用するアーティストを輩出していきたいですね。ダンスのレベルは日本もかなり上がってきていると思いますが、歌については例えば韓国のほうが先に行っていると思います。『エリザベート』は韓国でも上演されていますが、出演者は皆、歌が上手くなってきていますよ。それは新しい劇場が次々とオープンしたり、ミュージカルの学校も充実しているといった環境面の影響が大きいと思います。
日本のライブ・エンタテインメントを、皆でまとまって盛り上げていこうという主旨に私達も賛同させていただいて、この度ACPCに加盟いたしましたが、今後のACPCに期待するのは、日本の文化の裾野をより広げていくような動きをしていただければということです。宝塚歌劇団がフランス公演をすると、本家のフランスでも衰退しつつあるレビュー・ショーをやっているとのことで注目されるのですが、その際に必ず「国からどの程度の支援を受けているのか?」と聞かれて、「受けていません」と答えると驚かれます。国によって文化の民度の違いはあると思いますが、フランスでは国の予算に文化を支援する枠があり、アメリカのブロードウェイではミュージカルを中心とした街作りが行なわれていることを考えると、日本でももう少しエンタテインメントをバックアップしてもらえるようなシステムが整うといいと思いますね。