FUJI ROCK以降のフェスティバル新時代。約10年の変化と現在。
この10年、ライブ・エンタテインメント業界で起きた最も大きな変化の一つに、「全国へのフェスティバル(野外フェス、ロック・フェス、音楽フェス……)の浸透」を挙げても、異論のある方は少ないでしょう。もちろん、箱根アフロディーテ、中津川フォークジャンボリー、郡山ワンステップなど、70年代には数々の伝説的なフェスティバルが開催されていますし、80年代〜90年代前半も複数のアーティストが共演するイベントは数多く開かれていました。しかし、97年にFUJI ROCK FESTIVALが誕生して以降、全国各地でフェスが継続的に開催されるようになったのは明らかな変化ですし、何よりフェスによって主催者であるコンサート・プロモーターの存在もクローズアップされるようになりました。毎年夏には各媒体で「夏フェス特集」が組まれるのは風物詩になっていますが、本誌ではアンケートやインタビューで会員各社にご協力をいただき、「コンサート・プロモーターとフェスの現在」を浮き彫りにします。
あえてフェスとはいわずライブハウスの拡大版
Q.1このフェスならでは—という特徴は?
A.11999年に始めた「RUSH BALL」は関西近郊で、足下が芝生で、音量規制の無い場所で、関西のロック・シーンを盛り上げるべく続けているイベントです。あえてフェスとはいわず、ロック野外イベント(ライブハウスの拡大版)として現在の泉大津フェニックスで4度目の開催をいたします。今年は開催10回目の記念YEARで今年のみ2日間(8月30〜31日)開催します。
Q.2フェスの開催が御社のビジネス展開にどのような影響を与えていますか?
A.2夏の風物詩となる野外イベントが出演者の年間のスケジュールに確実に盛り込まれることにより、全国的な7月〜8月のワンマンツアーが減ったことは否めません。関西地区でのPR展開の一つとして活用していただくにあたり、他社さんに携わっているミュージシャンとのオムニバスができることにより、顧客の拡大を図れるようになりました。
Q.3フェスの運営をしている社員の平均年齢は?
A.3僕が35歳(今年36歳)で、他は25〜28歳のスタッフで進行しております。
Q.4フェスのプロモーションや運営にあたり、地元メディア・行政・開催地域の皆さんとの連携で特に気をつけていることがあれば教えてください。
A.4地元の協力なくしては、イベントの成功はありません。市内を走らせるシャトルバスや最寄り駅・待機場等、事前に関係各庁、自治体、自治会の訪問やお知らせを怠らず、大阪府・泉大津市の行政と連携をとり交通・警備・運営を調整します。関係沿線ではポスターの貼り出しや、チラシの配布等様々な協力をいただいております。
Q.5御社の年間売上のうち、フェスによる収益が占める割合はどれくらいでしょうか?
A.5平均的にいくと年間の約1割にも満たない程度だと思います。
少人数で手掛ける積み重ねでスタッフも成長
JUPITER 音楽祭 KIJIMA JAM inn
大分県別府市
Q.1このフェスならでは—という特徴は?
A.1TOSテレビ大分主催、CX系75分特番(全国ネット)を持つ、歴史あるジャズフェス『城島ジャズイン』からの流れで、1998年よりJUPITER音楽祭 KIJIMA JAM inn』がスタートしました。会場は、JUPITERという木製ジェットコースターが夜になるとオブジェのようになり、木の間から光る水銀灯の明かりから、なんとも神秘的なパワーが感じられる空間になります。お客様と出演者の一体感が感じられる、キャパ3000程度の特徴ある会場です。遊園地の中に会場があるため、朝の入園とともにコンサートのお客様も入園でき(チケット代に入園料も含む)一日遊べる施設でのイベントで、ファミリーにも喜ばれています。その模様は、全国のCX系にて、75分の特番として放送されアーティストのプロモーションとしても定評があります。8回目を迎える今では、大分県では貴重な恒例の夏フェスとなっています。
Q.2フェスの開催が御社のビジネス展開にどのような影響を与えていますか?
A.2収支的には、8年間を通して赤が出ない程度です。キャパが少ないのとステージが大きくないため、出演者数は限られます。売り上げは少ないですが、リスクも少なく、弊社が毎年開催できる唯一の夏フェスです。全国ネット放送もあるため、これによって出演者のプロモーションとしても役立ち、九州ツアー・イベントにも結び付けることができました。実質、弊社買取イベントですので、主催のテレビ局様は、リスクなく自社イベントができるメリットがあり、年間通して、弊社企画のコンサートには協力していただいております。このイベントの積み重ねで、弊社社員もイベント企画・制作をすみやかに手がけられるように成長し、お客様・会場・テレビ局の皆様に喜んでいただいております。また、九州の他県からもイベント企画・制作の依頼を多数いただくようになりました。
Q.3フェスの運営をしている社員の平均年齢は?
A.3JUPITER音楽祭は、私が33歳の時に手がけ、今では弊社若手27歳の担当者を中心に、私以外は2人という少人数(平均年齢35歳)で運営に携わっています。また、その他の夏のイベントは、私を含めて43歳・32歳・27歳(平均年齢34歳)の3人がそれぞれ担当しています。
Q.4フェスのプロモーションや運営にあたり、地元メディア・行政・開催地域の皆さんとの連携で特に気をつけていることがあれば教えてください。
A.4大きなフェスになればなるほど、人と企業との信頼関係とたくさんの方々の協力体制が重要な鍵となります。フェスの収益はもちろん大事ですが、その前に地方の県民への貢献イベントだと思っています。企画を進める際に、地元メディア・行政・地域のみなさんへの相談からスタートすると協力体制も整い、運営もやりやすくなりますが、特に行政の理解を求めるには地域差があり、興行という受け止め方が強いため、非常に苦労します。
Q.5御社の年間売上のうち、フェスによる収益が占める割合はどれくらいでしょうか?
A.5JUPITER音楽際は8年目にして、今までの収支の合計プラスマイナスゼロという感じですが、他夏フェス等のイベント収入を含めて、毎年売り上げ純利益率の20%を目標にしています。
地元の人が「見たいなぁ」と思うアーティストを呼ぶことが大前提
Q.1このフェスならでは—という特徴は?
A.1一番は“ロック・フェス”ではない所だと思います。何せ地方都市です。ロックに限らず地元の人が「見たいなぁ」と思うアーティストを呼んでくることを大前提としています。
また、「音楽と髭達」を開催している長岡市・国営越後丘陵公園は、本当にロケーションが美しく、家族で仲間で、1日遊んでも飽きない所です。「こんな良い所があったんだ」と地元の方に気付いてもらいたいとも思っています。それも地元プロモーターの使命だと思います。
見たいと思うアーティストを提供する、家族や仲間で楽しめる公園、そこから生まれた特徴が「ロックにこだわらない」ということだと思います。
Q.2フェスの開催が御社のビジネス展開にどのような影響を与えていますか?
A.2プロモーションとして、バラエティーに富んだアーティストが出演しているので、フェスで見たアーティストをワンマンで見たい、より深く知りたいというのがお客様の傾向です。確実に動員も伸びています。
また、地元とのかかわり合い、駐車場や交通・飲食など、地元企業側がビジネスチャンスだと考えてくださっていることです。さらにビジネスの範囲が広がると思います。
Q.3フェスの運営をしている社員の平均年齢は?
A.328〜35歳くらいです。
Q.4フェスのプロモーションや運営にあたり、地元メディア・行政・開催地域の皆さんとの連携で特に気をつけていることがあれば教えてください。
A.4局や行政は、「ウチがこのイベントをやっている」という意識を持ちやすいです。そうならないよう「イベントに来てくださるお客様のもの」「ステージに立ってくださるアーティストのもの」という意識を持っていただけるよう注意しています。これはスポンサーにもいえることで、イベントあってのスポンサーであり、スポンサーが下りたからイベントがなくなるということがないように、がんばらないといけないと思います。御賛同いただけるスポンサーは、きっと長いおつきあいができると思います。
Q.5御社の年間売上のうち、フェスによる収益が占める割合はどれくらいでしょうか?
A.55〜7%前後だと思います