2016年の「障害者差別解消法」の施行を受けて、本誌では正会員の皆様へ障害者対応に関するアンケート調査を行いました(結果は2017年発行のVol.34と35に掲載)。障害のあるお客様もできる限り公演を楽しめるよう、多岐に渡って細やかな対応がなされている一方で、障害者差別解消法が努力義務として定めた「負担の重すぎない合理的配慮」という文言の曖昧さ、お客様によって障害のレベルや求められる対応がまったく異なることの難しさ、設備環境などの不可抗力で対応が制限されてしまう実情が浮き彫りになりました。一方で障害のある方々は、公演の参加についてどんな印象をお持ちなのでしょうか。ACPCでは(株)ミライロへアンケート調査を依頼し、ここではその結果の一部をお伝えします。
調査期間 | 2019年3月1日~15日 |
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調査地域 | 全国 |
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調査対象 | 総回答数120 [内訳] 肢体不自由50名、視覚障害20名、聴覚障害20名、その他(精神/知的/発達障害)30名 |
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調査方法 | Webアンケート |
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回答者の年代 | 10代:8% / 20代:18% / 30代:15% / 40代:29% / 50代:24% / 60代:7% |
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【結果1】 公演参加に際して、困った経験のある割合と、代表的な困りごと(一部抜粋)
チケットの購入・発券
肢体不自由 58%
障害者席の購入方法がわからない/障害者スペースの場所が事前にわからない/同伴者が誰になるかわからず事前登録できない/通路側など、望ましい場所が選べない
視覚障害 70%
チケット購入が困難(Webでの画像認証や、コンビニ端末の操作など)
聴覚障害 15%
電話予約のみの時に対応できない
その他(精神・知的・発達)障害 43%
券種の違いがわかりにくい/コンビニでの払い方がわからない/どういった購入手段があるかわからない/店頭で並んで買うことが難しい
会場到着~物販コーナー
肢体不自由 60%
混雑しており危険を感じる/商品が見えない/動線に段差があったり列が折り返したりすると移動が困難
視覚障害 65%
売店の場所がわからない/混雑で状況がわからない/待機列での移動が困難/商品が見えない
聴覚障害 30%
メガホンやマイク、発声による誘導がわからない
その他(精神・知的・発達)障害 40%
どこにどう並べばいいかわからない/混雑の精神的負荷が大きい、うまく対応できない/周囲とトラブルになる
入場から着席まで
肢体不自由 58%
段差や階段がある/障害者スペースの場所がわからない/障害者スペースがない、場所が足らない/混雑していて人とぶつかる/良い席のチケットでも障害者スペースになってしまう
視覚障害 50%
入口がわからない/座席の場所がわからない/場内が暗く歩きづらい/障害物にぶつかる/各種文字が読みづらい
聴覚障害 30%
メガホンやマイク、発声による誘導がわからない/混雑時の流れがわからない
その他(精神・知的・発達)障害 53%
現在地やいるべき場所がわからない/周囲とトラブルになる/どういう流れで進むのかわからない/暗くて見えない/席が探しづらく、不安になりやすい/入口が多いとどの入口かわからない/人が多いと圧倒される
着席から公演開始まで
肢体不自由 26%
障害者スペースからステージが見にくい/多目的・障害者用トイレが少ない/人の出入りが多いとよけるのが大変
視覚障害 10%
トイレの場所がわからない
聴覚障害 45%
アナウンスがわからない/曲目がわからない
その他(精神・知的・発達)障害 23%
終了まで移動ができない/発達障害の特性上待つことが苦手、つらい/周りの人の話し声や視線が気になる/公演の始まりがわからない
公演開始から終了まで
肢体不自由 52%
前方の人が立つなどでステージが見えない/トイレなど気軽に移動ができない/立ち続けることが辛い
視覚障害 35%
トイレに行くことができない
聴覚障害 65%
MCやアナウンスがわからない/歌詞がわからない
その他(精神・知的・発達)障害 30%
トイレに行けなかった/スタンディングの公演だとペース配分が難しく途中離脱も難しい/押されたりするとパニックになる/場の空気に合わせられない/不規則な動きがあった/来場者のマナーが悪いと気になる
公演終了後、会場を出るまで
肢体不自由 52%
混雑するため出るのが大変/混雑を避けるために最後まで待たざるを得ない/周囲の人に自分の存在に気付いてもらえず押される
視覚障害 40%
階段や出口がわからない/出口までの案内がなされない/混雑していて危険を感じる
聴覚障害 25%
メガホンやマイク、発声による誘導がわからない/周囲の音が多く補聴器の音量調整に困る/出口がわからない
その他(精神・知的・発達)障害 50%
アナウンスがわからない/出口や帰り道がわからない/退場の行列に並ぶことが苦手/混雑の精神的負荷が大きい、うまく対応できない/混雑を避けるために一番最後か、早くに出ざるを得ない/行きの時に案内スタッフがいても帰りはいないため迷ってしまう