会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
見えてきた旧厚生年金会館の今後
売却後にホール機能は存続するのか
音楽文化を支えてきた厚年
2008年より政府が進めてきた年金福祉施設の売却・廃止措置は、全国厚生年金会館の存続の危機へとつながりました。ほとんどの会館が入札などの方法により、企業や団体、地方自治体などに売却、新たな所有者によって、そのまま建物を維持するかどうか、またその際にホール機能を存続させるかどうかが決められることになりました。その間、ACPCと全国の加盟コンサート・プロモーターは、地元の皆さんと協力しながら、署名運動や政府・地方自治体への要請など、ホール機能存続に向けての活動を続けてきました。
これらの経緯については、本誌でも継続的にお伝えしてきましたが、結果的には次ページのように、ホール機能の存続が決定したところ、残念ながら閉館に至ったところがあり、明暗が分かれる形になりました。無事、存続が決定した旧厚生年金会館の中で、特にアーティストやプロダクションからも注目が高かったのが大阪厚生年金会館の処遇。ご存知の通り、大阪は豊かなライブ・エンタテインメント市場があるにもかかわらず、公的なホール施設が多いとはいえず、2000以上のキャパシティを有するホールも大阪厚年とフェスティバルホール、グランキューブ大阪(大阪国際会議場)のみ。フェスティバルホールが建替工事により閉鎖中(2013年まで)である状況からも、大阪厚年のホール機能存続は関西の音楽文化にとって死活問題だったからです。
ホール存続決定までの経緯
在阪のACPC加盟プロモーターは、関係団体とともに、この問題が浮上して以降、2回にわたってホール機能存続の要望書を大阪市長に提出(08年6月/09年2月)。年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)が実施した入札をオリックス不動産が落札。その後も、プロモーター各社はヒアリングの場でホールの必要性を強く訴え、運営会社に決まっていた大阪シティドームとも、09年12月28日にはACPCの鈴置雄三理事(サウンドクリエーター代表取締役社長)と岡田哲理事(夢番地代表取締役社長)が、今年2月26日には鈴置理事が会談。現行の大ホールを継続運営する方向での話し合いが行なわれました。結果、今年3月24日にオリックス不動産より、既存施設(大ホールのみ)を残し、耐震工事等を行なった後、2011年秋にリニューアル・オープンさせる案がプレスリリースにて正式発表されたのです。
現在、大阪シティドームでは準備室が立ち上がっており、コンサート・プロモーターなど利用者側の立場も考慮してプランが練られているようです。
現在、在阪の加盟社では、大阪厚生年金会館不在の状態を、関西地区の同規模もしくは若干小規模のホール(グランキューブ大阪、梅田芸術劇場、アルカイックホール、NHK大阪ホール、神戸国際会館こくさいホール、岸和田浪切ホール等)へ振り分けを行なっており、苦心のプロモートが続いています。2011年に大阪厚生年金会館が、そして2013年にフェスティバルホールが帰ってくれば、大阪のライブ・シーンはさらに盛り上がることでしょう。2011年秋の大阪厚年リニューアル・オープンの際には、生まれ変わる同ホールがどのように運営されていくのか、改めて当サイトでも取り上げる予定です。
ACPCの存続支援活動
●年金福祉施設見直しの一環として厚生年金会館の売却・廃止の措置が決定された2005年、永田友純ACPC会長(当時)と社団法人3社(日本芸能実演家団体協議会、日本音楽事業者協会、音楽制作者連盟)の各会長/理事長の連名で、厚生労働大臣(当時)の川崎二郎氏へ「厚生年金会館のホール機能の存続を求める要望書」を提出。また、永田友純ACPC会長(当時)と社団法人日本芸能実演家団体協議会の野村萬会長との連名で、厚生労働副大臣(当時)の赤松正雄氏へ「厚生年金会館のホール機能存続のための要請」を提出しました。
●「北海道厚生年金会館存続を願う会」とともに、社会保険庁を訪問。同会がチャリティー活動シンポジウムを行なった際には、作曲家の都倉俊一氏に講演をしていただきました。
●社団法人音楽制作者連盟等へ存続支援活動の説明を行なうなど、他団体への働きかけを行いました。また、各地の活動団体の活動状況や会館の動向等の情報をFAXやメールで逐一入手、事務局でストックしました。全国の会員が集まる幹部会や理事会にて存続支援活動を議題とすることで、各地の状況や理念を共有し、情報交換の場としても機能しました。