チケット高額転売規制法(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)の施行は今年6月14日に予定されています。前ページの座談会でも語られているように、法律ができたことがゴールではなく、コンサートプロモーターはじめライブ・エンタテインメントに関わる人達がこの法律をきちんと把握し、どのように活かしていくかが、本当の意味での問題解決につながります。そこで音楽著作権やアーティスト契約などエンタテインメント法務の専門家であり、今回の法案成立にもご尽力くださった東條岳弁護士(Field-R法律事務所 パートナー弁護士)に、チケット高額転売規制法のポイントを解説していただきました。法律を広くユーザーに理解してもらうためにも、まず私達がしっかりと把握することから始められればと思います。
撮影:小嶋秀雄
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
東條岳弁護士がレクチャー/「チケット高額転売規制法」の活かし方、広め方
プロモーターが知っておくべき、この法律のポイント
「チケット高額転売規制法」の主な内容
「特定興行入場券」が対象
特定興行入場券=①チケット販売時に、同意のない転売を禁止する旨が明示され、②特定の日時、場所および「入場資格者または座席」が指定されており、③チケット販売の際に、入場資格者や購入者の氏名、連絡先等が確認されており、④興行主の同意のない転売を禁止する旨、氏名・連絡先等を確認する措置を講じた旨が券面に記載されているチケット
販売価格を超える、業としてのチケット転売を禁止
「業として」=反復継続し、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度のものをいう
罰則は1年以下の懲役または/及び100万円以下の罰金
刑罰の対象は、あくまで悪質な転売行為です
―今回成立したチケット高額転売規制法は、大まかにいえばどのような内容なのでしょうか。
東條:この法律は、これまで処罰できなかった「不正転売行為」が処罰対象となることを定めるものであり、プレイガイドなどの正規チケット販売者やファンクラブからチケットを買っている方々が処罰対象となることはないため、直接にはほとんど影響がありません。法律がターゲットにしているのは、これまで転売が禁止されているにもかかわらず、悪質なチケットの高額転売を繰り返してきた人達です。その他にも細かい規定が記されていますが、大まかにそう理解していいと思います。
―法に記された「販売価格を超える、業としてのチケット転売」が主なターゲットなわけですね。ここでいう「業として」というのはどういう意味なのでしょう。
東條:ターゲットについてはそうです。この「業として」という要件は、一般的には「反復継続し、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度」と考えられていますが、例えば何回売ったからとか、いくら稼いだからとか、明確な基準があるわけではありません。抽象的な要件なため、最終的には警察や検察、裁判所がどう判断するか、ということにはなるでしょう。ただ、近年問題になっている転売は、それこそ1人が数十枚から数百枚も出品するようなレベルのものです。しかも、チケットの抽選や販売が行われたすぐ後に大量に出品されている実態がありますし、自分では絶対行けないような会場・日程のチケットを複数購入している場合もあります。そのような場合は、いくら「自分で行くつもりだった」と弁解したとしても、それが裁判所で認められる可能性は小さく、「業として」行われているものと判断されることになるでしょう。