会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

問題の根本と急速に対策が進む海外の最新情報

毎号、様々な形でお伝えしているチケットの高額転売問題ですが、まだまだ解決には遠いのが実情です。それは「そもそも何が問題なのか」「ユーザーと音楽業界にどんな悪影響を与えているのか」といった根本的な部分で広く一般に伝わりづらい面があるのと同時に、状況が変化していくスピードの速さにも理由があると思われます。そこで今号では「Q&A」のフォーマットを使い、改めてこの問題の「根本」を解き明かしつつ、法改正などの対策で先行する海外の「最新」情報もお伝えします。

チケット高額転売問題Q&A

Q1 そもそも高額転売の何が問題?

大きな問題は、誰でもスマホなどを用いて簡単にネットダフ屋行為が可能になったことで、ファンが高額でチケットを買わざるを得ないケースが急速に広がっていることです。ネットダフ屋が転売目的でチケットを買い占め、転売サイトで値段を吊り上げるため、ユーザーは欲しいチケットが購入できなかったり、本来は払う必要のない上乗せ金額を負担しなければなりません。ユーザーの中には、高額な転売チケットを購入するために不正な行為をしたり、ファン自身がチケットを高額転売する「ダフ屋ファン」になるケースも増えています。

Q2 チケットの高額転売は違法ではないのか?

「公共の場所」で、「転売目的で購入したチケット」を「不特定多数に転売」することはダフ屋行為とされ、各都道府県が定めた迷惑防止条例で禁止されています。しかしインターネット空間は「公共の場所」と定義できるかがはっきりせず、条例の適用は難しいのが現状です。とはいえ、チケットの高額転売は「合法」ではなく、法の抜け穴を突いた「脱法行為」と言えるかもしれません。

Q3 高額転売が音楽業界に与える影響は?

会場での本人確認や顔認証を行うなどの転売対策で、本来は不要なコストが掛かるだけでなく、ユーザーに不便を強いる場合があります。そしてユーザーが高額の転売チケットを購入すれば金銭面の負担が重くなり、コンサートグッズの購入や他のコンサートへ参加する機会の減少が見込まれます。チケットが取れず、高値では買えないユーザーのライブ離れも考えられます。これらが積み重なれば、ライブ・エンタテインメント市場への悪影響は避けられません。

Q4 高額転売の利益は誰のものか?

ネットダフ屋や転売サイトはチケットを転売するだけのため、ライブの開催に伴うコストやリスクを負わずに利益を得ていますが、その利益はアーティストやクリエイター、スタッフとは関係のない第三者のものでしかありません。ネットダフ屋は転売利益の納税を怠るケースも多いと見られています。

Q5 問題解決に向けて、何をすればいいのか?

顔認証を含む本人確認、スマホアプリ上の電子チケットといった転売されづらいチケット販売、転売チケットの無効化、ユーザーへの啓蒙活動、良い席には高い値段を付けるチケット価格の弾力化など、様々な工夫と対策が行われていますが、高額転売はなくなっていません。
チケットの高額転売を完全に防ぐためには、ネットダフ屋行為を違法とする法改正が必要ですが、物を安く仕入れて高く販売する行為そのものは市場経済における自然な行動と見なされるため、チケット高額転売の違法性をどう定義するかも大きな課題です。
法改正をめざす場合、ネットダフ屋による高額転売が「営利目的である」と認定するために、やむを得ない事情でコンサートに行けなくなった人がチケットを正当な価格で転売できるような、業界公式のチケット転売サービスの立ち上げも急務です。


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