書籍名:60年代ポップ少年
出 版:小学館
一般社団法人コンサートプロモーター協会
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書籍名:60年代ポップ少年
出 版:小学館
作家・亀和田武氏が1960年代に触れた音楽(歌謡曲、ポップス、ロック、ジャズ)、SFを中心とした文学、漫画、映画を自伝的エッセイに織り込んで綴った一冊。60年代の10年間は氏にとって、小学6年生~中学・高校~予備校での2年間の浪人~大学入学の時期にあたる。まさに多感な季節に学生運動に身を投じながら、享受し続けたポップ・カルチャーの個人史といえるだろう。「個人史」であることが本書のポイントで、音楽であれば、ビートルズの登場を「ビートルズによって、私が偏愛していたメロウで切ない洋楽やその日本語バージョン(注:漣健児の訳詞で坂本九、弘田三枝子、飯田久彦らが歌った和製ポップス)が世の中から消えてしまった衝撃」と記す。
全体論的なポピュラー史であれば、ビートルズの登場はすべて肯定的に描かれるのが常だが、リアルタイムでこのように感じた若者がいたのだ。ビートルズこそが自分の好きな音楽を消し去ってしまったのだと。音楽の受け止め方は人それぞれであり、例えば先日ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの歌詞を、60年代の日本の若者達は実際のところどのように受け止めたのだろうか。スタンダードな「正史」より、ある種ひねくれた「個人史」のほうに真実は横たわっているのかもしれない。