会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。

ライブ・エンタテインメントに関わる専門知識からコンサートプロモーターの歴史まで。明日の仕事に役立つ「STUDY」をお届けします!

ライブを意識した作曲術、「アニソンとライブ」の関係性

昭和音楽大寄附講座 澄川龍一(『リスアニ!』編集長)×黒須克彦(作曲家)

平成27年度の昭和音楽大学寄附講座「音楽産業概論Ⅱ」では、昨年12月3日にアニソン雑誌『リスアニ!』編集長の澄川龍一さんと、『ドラえもん』の主題歌やμ’s、スフィア、乃木坂46、KAT-TUNなどの楽曲を手がける作曲家の黒須克彦さんによる対談形式の講義が行われました。黒須さんはベーシストとして活躍しながら、2005年頃にアニソンのコンペに誘われたのをきっかけに、本格的な作家活動を開始。楽曲を提供したアーティストのバンドメンバーとして演奏する機会も多い黒須さんのお話は、「アニソンとライブ」の関係の深まりが感じられるものでした。ダイジェストで掲載いたします。

澄川:アニソンのコンペに誘われた時はどう思われましたか?

黒須:アニソンとそれ以外のジャンルという偏見はなかったですし、制作方法にも差はありません。ただ、アニソンには映像があることで、ユーザーの感情により強く訴えかけられるので、曲が高く評価されたり、長く聴き続けられたりすることはいいですね。

澄川:学生から「黒須さんの曲はライブ映えするものが多いですが、作る時はライブを考えて制作しますか」という質問です。

黒須:ライブは大いに意識しますね。グループの曲だと、全員でサビを歌うパワー感をイメージするし、お客さんを煽りながら歌うだろうなと想像もします。ライブが大好きで、オーディエンスを前に、自分の曲を大音量で演奏できるのは気持ちがいいものです。また、たくさんの人が携わってステージを作り上げていく温度感を得られるのも、ライブならでは。音源制作はデータのやり取りだけということもあるので、僕はライブの温度感をフィードバックして制作に反映させています。

澄川:以前のアニソンライブは「声優とそのバックバンド」という位置づけでしたが、最近はバンド然としてきました。

黒須:生バンドも増えてきましたね。バンド全体でアーティストが一番カッコよく、輝いて見えるように、自己主張はせずに全力でサポートしています。

澄川:これも学生からの質問で「コンペで通らなかった曲はどうしていますか?」。

黒須:ストックしておいて、別の形で再び提出することもあります。曲が採用された翌日に、別のコンペの落選を知ることもありますが、自分を見つめ直すいい機会だとポジティブに捉えています。

澄川:音楽業界に進みたい学生にアドバイスをお願いします。

黒須:作曲・編曲、プレイヤーに向いているのは、一緒にいいものを作り上げる意識を持って、ほどよく妥協して他の人に合わせられる人です。音楽の専門的な勉強も必要ですが、僕のように仕事につながる可能性もあるので、人との付き合いを大切に心がけるといいと思います。

澄川龍一さん(写真左)と黒須克彦さん。講座が行われた教室では学生の皆さんが熱心に耳を傾けていた


関連記事

[SPRING.2020 VOL.45] チケット不正転売禁止法成立から1年、対策の最前線

[WINTER.2019 VOL.44] 出演者や運営に障害者、スタッフはコンサート・イベント科の学生 GCグランドフェスティバルが目指す「共生社会」

[AUTUMN.2019 VOL.43] ライブ・エンタテインメント業界の「働き方改革」対応のために、Q&Aで学べる『労務管理ハンドブック』が発行

[SUMMER.2019 VOL.42] navi STUDY 展示会や出版物で表現された「プロモーターの歴史」

[SPRING.2019 VOL.41] navi STUDY 「第6回ライブ・エンターテイメントEXPO」のセミナーで、スポーツ×ライブの新機構「ECSA」設立がアナウンス

[WINTER.2019 VOL.40] navi STUDY チケットの高額転売問題を文化芸術推進フォーラムでアピール

[SUMMER.2018 VOL.38] navi STUDY Coachella Valley Music and Arts Festival 2018視察報告

[SPRING.2018 VOL.37] navi STUDY 第5回 ライブ・エンターテイメントEXPO」基調講演採録

[WINTER.2018 VOL.36] navi STUDY ライブ・エンタテインメント議員連盟総会で法案の骨子を承認

[AUTUMN.2017 VOL.35] navi STUDY チケット定価再販サイトでネットダフ屋対策が進むアメリカ

[SUMMER.2017 VOL.34] navi STUDY 筑波大学、文科省、宇宙航空研究開発機構、ベンチャー企業などが協力

[SPRING.2017 VOL.33] navi STUDY 世界的に増えつつあるアーティストの展示イベント

[WINTER.2017 VOL.32] navi STUDY フェスにおけるダンス系アクトの可能性とEDM最新事情

[AUTUMN.2016 VOL.31] navi STUDY 20周年を迎えたフジロックの進化、各地の新傾向フェス

[SUMMER.2016 VOL.30] navi STUDY 「何でもあり」のニコニコ超会議に10~20代が集まる理由

[WINTER.2016 VOL.28] navi STUDY セキュリティを巡る議論、事件の経済的影響、パリ市民の活力と支援の広がり

[AUTUMN.2015 VOL.27] navi STUDY 相次ぐ会場の改修・閉鎖とオープン 2016年「以降」会場不足問題を一覧表でまとめ

[SUMMER.2015 VOL.26] navi STUDY プロモーター自らが発信する、フェスをテーマにしたWEBマガジン

[SPRING.2015 VOL.25] navi STUDY 昭和音楽大学 平成26年度ACPC寄附講座「音楽産業概論Ⅱ」

[WINTER.2015 VOL.24] navi STUDY 「11thTIMM」レポート

[AUTUMN.2014 VOL.23] navi STUDY エグジビション ジャパン社主催「第1回 ライブ&イベント産業展」

[SPRING.2014 VOL.22] navi STUDY 平成25年度ACPC定時社員総会報告

[WINTER.2014 VOL.21] navi STUDY PAチーム、SPC peak performance主導の「東北ライブハウス大作戦」

[AUTUMN.2013 VOL.20] navi STUDY 「10thTIMM ショーケースライブ」レポート

[SUMMER.2013 VOL.19] navi STUDY 6月14、15日 韓国・チャムシル総合運動場 アジア版Ultra Music Festival「Ultra Korea」レポート

[SPRING.2013 VOL.18] navi STUDY New Orleans Jazz&Heritage Festival現地レポート

[SPRING.2013 VOL.17] navi STUDY 風営法「ダンス規制」が音楽文化に与える影響

[WINTER.2013 VOL.16] navi STUDY ACPCセミナー2012 グレッグ・パーロフ氏 講演会ダイジェスト

同じカテゴリーの記事

[SPRING.2020 VOL.45] 心の免疫力

[SPRING.2020 VOL.45] プロレスラーは観客に何を見せているのか

[WINTER.2019 VOL.44] 万博インバウンド

[WINTER.2019 VOL.44] 細野観光 1969-2019 細野晴臣デビュー50周年記念展 オフィシャルカタログ

[AUTUMN.2019 VOL.43] この人達のおかげです

[AUTUMN.2019 VOL.43] 障害者の舞台芸術 鑑賞サービス入門

[SUMMER.2019 VOL.42] 蒸し暑い大阪で

[SUMMER.2019 VOL.42] チケット不正転売禁止法がよくわかるQ&A

[SUMMER.2019 VOL.42] 展示会や出版物で表現された「プロモーターの歴史」

[SPRING.2019 VOL.41] 新元号、新顧客

もっと見る▶