もう一度、海外アーティストで全国ツアーができる時代へ―
(左)清水直樹 一般社団法人コンサートプロモーターズ協会常務理事/株式会社クリエイティブマンプロダクション代表取締役社長
(右)高橋辰雄 一般社団法人コンサートプロモーターズ協会理事/株式会社ウドー音楽事務所取締役副社長
ACPCが行った2013年の「ライブ・エンタテインメント市場調査」によると、海外アーティストの公演数は、国内アーティストと比較すると約1/12。ひと言でいえば「邦高洋低」という印象ですが、日本のコンサート史に与えた「洋楽」の影響力、現在も変わらないSUMMER SONICやFUJI ROCKにおける存在感、ドームからライブ・レストラン、クラブまで幅が広がってきている公演規模などを踏まえると、今後もACPC会員社にとって重要な柱であることは間違いありません。海外アーティストの公演を中心に手がけるウドー音楽事務所の高橋辰雄さん、クリエイティブマンプロダクションの清水直樹さんに、現在の市場と来日公演の先に見える世界のライブ・エンタテインメント・シーンについて語り合っていただきました。
高橋:海外アーティストのコンサートが日本で行われ始めた頃は、基本的に音楽を「聴く」ための場だったと思います。それがどんどんディズニー化、もしくはラスベガス化、遊園地化して、聴くよりも「観て楽しむ」ほうが優先されるようになりました。いわゆるプロダクション・ショーが増えていったわけです。そうなれば当然、ステージにかける制作費も増大してきますが、その分ちゃんと動員にもつながったことで、市場が大きくなっていった面もあります。もともとはピンク・フロイドやローリング・ストーンズが、アリーナやスタジアムのコンサートで始めたことですが、日本のトップ・アーティストもその影響を受けて、コンサートの規模が大きくなっていきました。
現時点で問題なのは、この20年間を考えてみると、そういった大規模コンサートを行えるロック・バンドが、あまり出てきていないということでしょうね。
清水:アリーナ・クラスの会場でコンサートをできるバンドが、最近は少なくなりましたね。以前であれば新人
を武道館に持っていくのが目標でしたが、今はなかなかそこまで辿り着かない。だから、ここ数年でライブ・エンタテインメントのマーケットが大きくなったといわれても、僕自身はあまり実感がないんです。
高橋:例えばマルーン5もいますし、決してゼロではないんですけれど。
清水:コールドプレイもいますしね。でも現状、日本でスタジアムまでの動員力があるかといえば、なかなか難しいことは確かです。