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舞台の安全と責任の所在

山本幸治(ACPC理事)

NPO法人日本舞台技術安全協会について、詳しくはホームページをご覧ください。 http://www.jasst.org/J/index.html

6月26日、NPO法人日本舞台技術安全協会(略称JASST:清水卓治理事長=シミズオクト代表取締役)主催による安全シンポジウムが開催されました。今回のテーマは「演出空間の安全」ですが、これまでのJASSTとACPCとの懇談の際も「安全の共有」をテーマとしており、「安全」はある意味で “永遠のテーマ”となっています。
それというのも、昨今、舞台設営や本番中の事故が頻発し、その多くが舞台規模の大型化に伴う高所作業に多くの事例が見られるからです。
東京都内で起きた死亡事故の際は、筆者も労働基準監督署に呼び出され、業務発注者としての責任を自覚するよう注意を受けました。もちろん、ここには誰が発注者か、という問題が積み残されますが、とにかく一人の人間の命が失われたということに関しては、関係者として胸の痛む注意勧告であったことが思い出されます。
さて、今回のシンポジウムにおいては、「労働安全衛生規則」の改正が確認されました。これは本年6月1日から施行されたもので、「足場等からの墜落防止」の対策強化を目的としたものです。そこには事業者が行なうべき措置及び点検に関することとならんで、発注者が行なう足場についての措置と点検に関することが規定されています。
ここでいう発注者を労働安全衛生法では第31条に規定しています。これは主として建設現場における規定ですが、労働基準監督署においては、建設現場と同様の作業をする以上、舞台設営についてもこの規定が準用され、主催者、企画制作者が発注者と解釈されるとの説明を先の呼び出しの際に受けました。
不幸にも事故が起きてしまった場合、その責任の所在はいずれか、ということが問題になりますが、今後も演出上の都合によって危険な作業が必要とされた場合、プロダクションあるいはプロモーターもその責任がまったく問われない立場に居続けることはむずかしいかもしれません。この案件については継続して取り上げていきます。


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