書籍名:想像ラジオ
出 版:河出書房新社
一般社団法人コンサートプロモーター協会
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
ライブ・エンタテインメント業界人必読!
コンサートプロモーターが今、読むべき本を毎号紹介します。
書籍名:想像ラジオ
出 版:河出書房新社
今号の連載対談では、中西健夫ACPC会長が東日本大震災後の芸術、エンタテインメントの役割について、書家の紫舟氏と語り合っている。あの圧倒的な現実を経験して、多くのアーティストやクリエーター、そしてライブ・エンタテインメントに携わるコンサートプロモーターは同じように「自分たちに何ができるか」と考えただろうし、震災から2年以上が経った今も、その問いかけは続いている。いとうせいこう氏も自身の役割を問い直した一人であり、本書は(直接的にはそう明示されていないにせよ)震災を題材に氏が16年ぶりに発表した小説作品である。
物語は主に「想像ラジオ」を通して語りかけるDJアークのモノローグで構成されている。想像ラジオとは、想像することで聞こえてくるラジオのことで、それ自体がもちろん想像の産物だが、現実離れしたフィクションが介在することで、生者と死者、死者と死者をつなぐ物語が生まれ得ることを本書は示している。また、本書が出版不況にもかかわらず10万部を突破したことで、人々はやはり「現実」以外の表現も求めているのだということを証明したのではないだろうか。
読後に涙が止まらなくなる作品であると同時に、芸術やエンタテインメントに関わる人間にとっては、想像力と創造力の可能性を信じ続ける勇気をもらえる一冊である。