キョードー東京は、ブロードウェイ・ミュージカルを日本へ継続的に紹介し、そのマーケットを広げつつあります。今年5月末には『HAIR(ヘアー)』、そして8月には『アメリカン・イディオット』を招聘。次々とプレミアムな公演を実現している同社で宣伝を担当する雲林院康行さんに、来日ミュージカルのプロモーションを中心としたお話しを伺いました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
日本のミュージカル市場を広げる二つのベクトル、二つのやり方
多くのACPC加盟社の業務の中心はコンサートや音楽関連イベントですが、さらにライブ・エンタテインメント全体のマーケットを活性化するためには、幅広いコンテンツの提供が求められることも確か。「総合エンタテインメント」であるミュージカルは、まだまだ「伸びしろ」があるジャンルとして注目されています。先行する2社にミュージカル市場の現状と可能性を伺ったところ、対照的なベクトルが浮かび上がってきました。
「非日常的」な空間がコアなファンを惹きつける
雲林院:国内外の作品を問わず、連日劇場に足を運ぶコアなミュージカル・ファンはいらっしゃいます。そんな方々を中心に、誰かに誘われれば観に行くようなグレーゾーンの方々、初めてミュージカルを観に行く方々までを見据えて、どのように劇場に足を運んでいただくかを常に考えて宣伝しております。
プロモーション的に最も効果があるのは、マスメディアでの勢いのある宣伝に連動した、横の広がりを期待できる口コミです。ミュージカルの場合、チケット発売の初動でコアなお客様はご購入されますが、完売までは至りません。宣伝により情報が浸透すると話題性からグレーゾーンの方々が動き出します。さらに開催が近くづくと、来日キャストなどアップデートされた公演情報により、未購入のコアな方や、一大決心をして初めて劇場に行かれる方がご購入される傾向があります。初日の幕が開いた後も、目の肥えたお客様のSNS効果が動員に少なからず影響を与えます。
海外作品の場合、その作品が持つパワー(認知度)が動員の原動力となります。過去にトニー賞などを受賞したことは、必ずキャッチコピーに入れています。安くはないチケットなので、何らかの安心感が購入の決め手になると感じています。また、劇場に来られるお客様は特別な何かを求めていらっしゃると思います。海外でしか観ることができない作品を日本で楽しめる。どうせ楽しむなら、オシャレして劇場に行こうというお客様の期待には応えたいですね。ミュージカル観劇を中心とした非日常的で贅沢な時間の過ごし方の全体がエンタテインメントといえるのではないでしょうか。