「チケトレでこだわっているのは定価でのリセール。それが立法によって保障されれば大変ありがたいですし、一方でチケット価格に幅を持たせることも考えていきたい」 (野村達矢)
-次のステップは間違いなく法規制であることが見えてきました。では具体的に、どのような法律が求められているのでしょうか。
山下:欧米での法規制は、不正なプログラムであるボットの使用を禁止するものもありますが、例えば複数のIDを使い、手作業で大量のチケットを買って、それを高値で売り出す場合も結構あるでしょう。ですから、これからヒアリングを重ねて、実態を把握し、どのような法律で対応すべきかについて、皆さんのご意見を伺いながら考えていきたいと思っています。
野村:ネット上で特定の転売者が大量にチケットを買い占めてしまうことを防ぐためには、ボット規制も有効だと思います。それと同時に今、山下先生がおっしゃった「ボット規制だけで大丈夫なのか」という発言も非常に大事だと思いますね。「チケトレ」でこだわっているのは、ユーザーのニーズに対して、定価でのリセールで応えることなんです。券面額以上でも以下でもなく、券面額をキチッと明示して、その額で譲ることをすごく重要視していますので、それが立法によって保障されれば大変ありがたいですね。
さらに付け加えるなら、もともとのチケット価格に幅を持たせることも我々は考えていかなくてはいけないと思います。これまでは会場のどの席のチケットも、なるべく平等な価格で販売することを大切にしてきましたが、席によって価格にある程度の差をつけたり、付加価値があるチケットを考案することも、ニーズに応えることになるんじゃないでしょうか。
中西:チケット価格については、我々もいつも悩んでいるんですけれど、最近は「プレミアムシート」「VIP席」という席を作ることも増えて、高い席から売れていく傾向はあると思います。席の場所が確約されていたり、特別感を味わえることがお客さんのニーズにマッチしているんだと思います。
また、フェスの場合も、たとえば『VIPチケット』みたいなものを用意して、買っていただいた方には会場内をまわる導線が別ルートを使えて、ケータリングも楽しめる、みたいな発想をしていかないと。お客さんがそのライブに求めるものは、それぞれ違いますからね。
山下:大事なのは、チケットの値段を決めるのはダフ屋ではなく、アーティストであり、主催者であるべきだということですね。チケットによる収益はアーティストや、次の世代のアーティストを育てる役割を担う方に還元されるべきだと思います。
-最後に立法化に向けて、どんなスケジュール感で臨むのか、山下先生から伺えれば。
山下:それをここで明言するのは、とても難しいですね(笑)。でも、迅速に進めていかないと、全国のファンに怒られます。立法は何をやっているんだと。
先程も申し上げたように、東京オリンピック・パラリンピックのチケットが高額転売されるような状況は、私どもは許し難いと思っていますので、それまでに見える成果を出していきたいと思います。国会閉会中も検討していき、できるだけ早い段階で方向性を示したいと考えています。