松田:難しいところだと思うのは、お客さんの中には、法律ができることを応援してくれた人も、転売サイトを利用してチケットを購入していた人もいるわけです。「それでなんとかこの舞台を観ることができました」という人も。それが現実なんですよね。
中井:海外では市場のニーズに合わせてチケットの値段を高くするという発想になっていますよね。逆に当日までに売れなければディスカウントして。
中西:あらかじめ料金に差があるチケットを用意したり、金額を座席ごとに変動させるダイナミック・プライシングが世界的には主流になりつつあります。
野村:高額転売の問題は、正規の値段に上乗せされた分が全く関係のない第三者に流出していたことも大きな問題でしたが、ダイナミック・プライシングを導入した時に、それによって生じた利益をアーティストや主催者などに還元できれば受け入れられやすくなるとは思います。
松田:お客さんも自分が払ったチケット代がアーティストや出演者、自分が応援している劇団や会社にちゃんと還元されていれば納得するんじゃないでしょうか。
野村:以前は日本でもよくやっていた、S席、A席、B席みたいに3券種くらいのグレードをつけて売る方法もありますし、最近海外のアーティストがやっている、特典をつけたプレミアム・チケットを用意する一方で、若いお客さんのためにレギュラーのチケットを安くするやり方もあります。去年くらいからサカナクションもそれを導入しています。
松田:芝居だと日本でも席種が3種類くらいあって、金額にも差があるので、コンサートはどの席も同じ金額で売られている場合が多いと知って驚きました。中国で公演すると、一番高いところが3万円、一番安いところが2千円といったような相当な開きがある設定になることもあります。それに比べると日本はかなり平等意識が強いですよね。
中西:海外や他のエンタテインメントの状況を考えると、コンサートでも段階的にダイナミック・プライシングを試す価値はあると思います。