会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
歴代ACPC会長が語る団体の歴史
コンサートプロモーターの「原点」とライブ・エンタテインメントの「転換点」
いい音楽をどう売っていくのか。 プロモーターの原理原則を 見つめ直す時が来ている。
―中西会長には、ACPCが現在取り組んでいる課題についてお伺いしたいと思います。
中西:ここ2〜3年の大きな問題としては、まず会場不足です。数年前から、2016年にはコンサート会場の不足が顕在化するといわれていたのですが、続いてチケットの高額転売問題も起きて、民間である我々だけの力ではどうにもならない、官民一体の対策を避けては通れないと考えました。具体的にはライブ・エンタテインメント議員連盟というものをつくり、政治家の方々やスポーツなど、他ジャンルの皆さんと一緒に、我々が直面している問題に取り組み始めました。
チケットの高額転売問題についていえば、大手転売サイトが大量のTVCMを打ち、さも合法のように二次流通にポピュラリティを持たせてしまった。これは僕らにとって大変な衝撃で、今まで培ってきたものが半年や1年ですべて失われてしまうかもしれない、というくらいの危機感を感じました。転売を規制できる法律がない現状について、官公庁も含めて色々な方々と話をして、どういう法律をつくればいいのか、どういうことが一番エンドユーザーに対して正しいのかを検討し、法律の骨格まではできましたので、近々に超党派の議員立法という形で一つの成果は成し遂げられると思います。
次に働き方改革。我々プロモーターは何時から何時までが仕事なのか、ファジーな部分もありますので、Q&Aで実例を分かりやすく示せるように、関係省庁の方々と話し合いを続けています。我々の業界の仕事が、一般の会社とはかなり違うことは理解して下さっているので、このQ&A集を通して問題を広く周知させていきたいと考えています。さらに重なってくるのが、アルバイトなどの労働力の不足。これはもう音楽業界に限らずですが、長期的なスパンでどうアルバイトの人材を確保していくか、あるいは「アルバイト」というカテゴリーを広げていくのかを検討しているところです。
さらには去年、今年の異常気象。特に今年は信じられないくらいの数のコンサートが中止になりました。例えば、コンプライアンス意識が高まっている昨今、35度以上の猛暑でフェスをやっていいのかとか、そういうことも考えるべき状況になってきました。自然環境との闘いではあるのですが、我々の危機管理が問われているともいえるわけで、業界内できちんとした共通意識を持っていくことが急務だと思います。
―コンサートプロモーター全体に視野を広げると、どんなことが問われているとお考えですか。
中西:プロモーターの存在価値がどこにあるか、それぞれが問うべきだと思います。レコード会社の全国ブランチがなくなって、各地のプロモーターにかなり負荷がかかってきていますが、一方でアーティストのプロモーションを丁寧にやっていくこと、特に地方のメディアとの連動はとても大切ですし、やり甲斐もあると思います。そのあたりの価値観、いい音楽をどう売っていくのかという原理原則みたいなものを、一度ピュアに見つめ直す時期にきているんじゃないでしょうか。
更にいうとここ数年、コンサートプロモーターという言葉が正しいかどうか、というところに来ていると思います。コンサートが我々のメインであることは間違いありませんが、各社が多種多様なことを手がけていますので、時代に即した、例えばeスポーツへの対応も考えていかなければいけないかもしれない。エンタテインメントプロモーターとして自分達を考え直す、今まさに変革の時が来ていると思います。