中西:今の話を音楽に置き換えると、例えばきゃりーぱみゅぱみゅが海外で受けているのは、当然ヴィジュアルやファッションが面白がられているわけじゃないですか。あの感覚は日本独特のものだけに、世界の人たちから見ればキテレツなファッションですよね。でも、だからこそキュートだし、クールに見える。
紫舟:日本は島国で、長く鎖国をしていただけあって、キテレツなものがいっぱいあるんですよ。まだまだ世界の人が見たことない、新しくてカッコいい文化はあると思うので、音楽でも世界に進出できるアーティストは出てくると思います。
中西:僕が、日本のアーティストももっと世界に進出するべきだと思うのは、海外に出てみて、初めて自分の置かれたポジションが明確に分かると思うからなんです。紫舟さんもそうでしょう。
紫舟:はい。挫折して、失敗して、初めて自分が今まで、どんな場所に立っていたかを知りました。
中西:そう、冷静にジャッジできるでしょう。日本の中で活動しているだけだと分からない自分の姿が、きっと見えてくると思うんですけどね。
紫舟:これはあくまで一人のファンとしての意見ですけれど、音楽産業の製造者と消費者の間のギャップを感じます。音楽は音のクオリティーよりも、軽くて持ち運べるものが受け入れられ、iPodが圧勝しました。そして今、CDよりも、YouTubeでライブ演奏を聴くことが多くなりました。CDは音質が素晴らしい。しかし、パソコンやスマホで音質はよくないけれどライブを聴く。それは、CDは制作過程で、声のボリュームや音が楽譜通りの音程に調整され、完璧さを求めるあまり、そのあまりにバランスの整った完成品は、人を感動させたりする力が弱くなり退屈になってきた。一方で、完璧じゃないけれどもアーティストが必死で伝えたいと願いマイクを握ったYouTubeでのライブ音楽は、圧倒的にカッコよく、心にしっかりと響いてくる。
中西:レコーディングで音を細かく調整したり、リズムを正確にすることで、魅力が半減してしまっているアーティストは確かにいると思います。それに気づくと、いわゆる一発録り、CDでもライブのような感覚で録ることを試みるようになります。そっちのほうが、グルーヴ的にもいい効果が出ることがあります。CDも素晴らしく、ライブでさらに輝くアーティストを多く育て、その魅力を改めて伝える必要があると思うんですよね。