デザイナーズブランドの古着やバッグのセレクトショップ「RAGTAG」を全国展開する企業、株式会社ティンパンアレイが、6月20日にライヴハウス「下北沢GARDEN」をオープン。これまでも「本業」で大きな成功を収めた企業が文化事業に進出した例は数多くありますが、不景気の波が世間を覆っている現在、ライヴハウスをゼロから立ち上げるには相当な理由があるはず。その社名からも伝わってくる、音楽への「思い」が果たしてその理由なのでしょうか?GARDENゼネラルマネージャーを務める岡田剛さんに伺いました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
ハイブリッド化するライヴの担い手
株式会社ティンパンアレイ
本当にいいもの、新しい文化
弊社は、つくり手の思いの詰まった洋服を循環させて長く使っていただきたいという思いから始まった会社で、長年リサイクル店を営業してきました。音楽にも似たようなところがあって、いい音楽は長く聴き続けることができると思うんです。とはいえ、一生懸命いい音楽をつくっているのに、なかなか日の目を見ないアーティスト達もいると思いますので、そんなアーティストを世の中に広めていきたいと考えたのがライヴハウス設立の出発点です。昨年からFUJI ROCK FESTIVALのROOKIE A GO-GOに協賛として参加して、新人アーティスト達をサポートしてきましたが、これからはライヴハウスという形で、本当にいいものを世の中に広げ、新しい文化をつくっていきたいと思っています。それとティンパンアレイという社名からもお分かりかと思いますが、弊社の代表が大の音楽好きで、会社を設立する前にバンド活動をしていたという経緯から、ライヴハウス事業に進出したいという気持ちを以前から持っていたようです。
ライヴは「百聞は一見にしかず」で、その場に行って実際に感じることが何よりの楽しみだと思います。好きなアーティストのライヴであれば、お客さんにとってはライヴを体験するだけで満足かもしれませんが、それだけでは終わらせたくないという思いは強くあります。会場に足を運んでいただくことは、一つのレジャーだととらえているので、出演するアーティストやお客さんに対して、一度限りのつながりではなく、もっと深いところでの接点を大切にしたいと思っています。ライヴハウスではなくホテルのような感覚で運営できればいいですね。
全国店舗を活かした動員を
オープニング公演はザ・クロマニヨンズです。甲本ヒロトさんと真島昌利さんは、長く音楽活動を続けて変わらないスタンスをお持ちで、下北沢に縁もあるので、GARDENのイメージに合うと思っていたところ、偶然先方から問い合わせがあったのですぐに決定しました。その後のラインアップとしては、まだオープン前でライヴハウスとしての認知度も低いため、当分はハコ貸し的な要素が強くなると思いますが、独自企画のイベントも順次開催していきたいと思っています。「GARDENに行けば、いつも面白いことをやっている」とお客さんに思っていただけるライヴハウスを目指しています。具体的には音楽以外のイベントもやっていきたいですね。クラブのイベントやファッションショー、お笑い、演劇、トークライヴなど、様々なジャンルの多目的ホールとしても活用してほしいと思います。
下北沢は小さなライヴハウスが点在している街ですが、GARDENは500人規模のキャパシティですので、それだけで他店との違いは出していけると思います。他にもステージの高さは45センチとかなり低く、横に長いステージなので、アーティストとお客さんとの距離がすごく近くなっていますし、邪魔になる柱もなく、ステージの両サイドは高くなっているので、どこからでも見やすい構造です。200インチのスクリーンもあるので、映像を使ったイベントも可能ですね。
また、ライヴハウスが独自にプロモーションツールを持っているところは少ないと思いますが、弊社にはRAGTAGの店舗が全国にあるので、各店でチケットを販売したり、マンスリーのスケジュール表も置きたいと思います。今までライヴハウスに行く機会がなかった人に、いいきっかけが与えられるように、店舗をうまく利用していきたいですね。