中西:夜間市場が活かされていないのはコンサートも一緒で、例えば自治体が持っている会館では、夜9時には必ず終演しなくてはいけないなど制約が多いんです。最近は60~70代のキャリア・アーティストも増えて、ファンも年を重ねていますから、コンサートの時間帯の幅を広げるチャンスだと思うんですけどね。昼間の公演、夜遅くにお酒を飲みながらゆったりと観る公演、2つの可能性があるんじゃないかと。
梅澤:広くナイトタイムエコノミーをとらえると、伝統芸能にも可能性があると思います。今、歌舞伎や能などは昼か夕方の開演という感じでしょう。外国人や、若くて会社で働いている層もお客さんだと考えるなら、深夜は難しいにしても、せめて夜8時からの開演だったらぐっと足を運びやすくなると思います。
中西:週1回でもできるといいですね。僕も伝統芸能を全然違う概念でプロモートしたらどうなるんだろうと、ずっと考えているんです。
梅澤:テクノロジーを採り入れた「超歌舞伎」もありますし、発想を変えれば、そこに潜在市場はある。
中西:全国各地からできることもあると思うんですよ。インバウンドについても、大阪が訪日観光客を1000万人集めていたり、北海道や福岡はもともと人気が高かったり、そういった地区をモデルケースにして、色々なことにトライするのもアリだなと思うんです。
梅澤:ぜひお願いします。各地でいいナイトタイムエコノミーのコンテンツがつくれると、東京よりも経済効果は大きいです。なぜなら、今まで昼間の観光地を訪問してすぐ次の場所に移動してしまっていた人たちが、そこで1泊するようになりますから。
今日、中西さんにお伺いしたいと思っていたのは、外国人がストレスなく公演を探し、チケットをネット上で買えるインフラはつくれないのでしょうか―ということなんです。
中西:それをやらなければダメでしょうね。僕がここのところずっと訴えているのは、外国人向けのエンタテインメント・コンシェルジュみたいな機能が必要だということです。海外のお客さんの志向を分かった上で、幅広いコンテンツの中から日本のライブ・エンタテインメントをレコメンドできるようなシステムを、必ず立ち上げなくてはいけないと思っています。
梅澤:自分自身の話をしますと、例えば海外出張が決まったら、僕はクラシックも好きなので、現地のオーケストラを観るために週末まで1泊、2泊伸ばそうと考えて、コンサートの情報を探してチケットを押さえるんですが、日本を訪れる外国人の方々はそういうことが難しいですよね。正直、残念だなと思います。
中西:残念すぎますよね。これは行政や自治体との連携も含めて、検討すべきだと思います。エンタテインメントだけではなく、スポーツコンテンツも当然必要ですので、オールジャンルのライブ情報が集まり、チケットも正規の値段で購入できるインフラを最終的にはつくるべきなんですよ。これは僕らにとって大きな課題です。