「取り締まる法律がないにもかかわらず、高額転売が当たり前のように行われている。新たな法律が必要だという認識は、議員の間でも急速に広がっています」 (山下貴司)
-先日の記者会見でも、質問の多くは立法化に関することでした。ここからは議連の事務局長である山下先生にも議論に加わっていただきたいと思います。
山下:この問題がクローズアップされたのは最近ですが、一方で「古くて新しい問題」ともいえると思います。行きたいコンサートのチケットをなかなか入手できない経験は多くの人が持っているものですし、例えば深田恭子さんの出世作となったドラマ「神様、もう少しだけ」(1998年)は、コンサートのチケットを紛失してしまった女の子が、ダフ屋から手に入れようとして悲劇に巻き込まれてしまうストーリーでした。
-確かにそうでした。
山下:コンサートだけではなく、例えばダフ屋は昔から野球場の前で転売行為を行っていましたよね。私の前職は検事でしたから、ダフ屋を取り締まったことがあるんです。だからインターネットを使ったチケットの転売も取り締まれると思っていたのですが、実は取り締まるための法律がないんだと気づきました。あるにはあるんですが、なかなか適用が難しいんです。
ダフ屋を取り締まっているのは国の法律ではなく、都道府県ごとの迷惑防止条例で、日本の47都道府県のうち41にはあるんですけれども、条例がない地方自治体もあるんです。さらに迷惑防止条例は、公共の場所での迷惑行為を禁止するもので、リアルではないインターネット空間は公共の場所と認められていない。つまり、取り締まれないんです。
-法が時代に追いついていないわけですね。
山下:にもかかわらず転売行為が当たり前のように行われていて、場合によっては正規の価格の10倍、20倍で売られている。中には「ボット」と呼ばれる、ネット上でチケットを大量に購入するプログラムなどを使用して、自分には必要のないチケットを売りさばくことを目的とする職業的な転売者も少なくないと聞いています。これは新たな法律が必要だという認識は議員の間でも急速に広がっています。
-山下先生が音楽業界の方々とコミュニケーションを取るようになって、チケットについて認識を新たにしたことはありましたか?
山下:海外と比べると、日本のアーティストはできるだけ安い値段でファンの皆さんにコンサートを提供しようとしているんだなということです。アーティストだけでなく、コンサートに関わる方々は、セットや機材に資本を投下しながら、多くのファンに楽しんでもらえる本当に適正な価格を設定しようと努力されている。一方でネットの転売者は、本来ならファンが適正な価格で手に入れられるはずのチケット料金をつり上げて、その上前をはねているわけで、これは取り締まらなくてはいけない、アーティストのためにもやらなければいけないという思いが強くなっていきました。