別のシナリオがあるとするなら、転売の際に金額を上乗せすることを認めて、それがアーティストやコンサートの運営側に還元される仕組みをつくることです。アメリカの大手チケット販売会社は、転売を公式化しています。転売を希望するユーザーはそのアカウントから自由に金額を上乗せして販売できますが、転売益の一部は主催者側に還元されます。果たしてベストの方法かは疑問ですが、チケットを買い占める「転売ヤー」と転売サイトが莫大な転売益を独占して、アーティスト側に一銭も入らない現状よりは良いかもしれませんね。その分で、平均のチケット代を少しでも安くするなど観客側に還元することもできます。
日本のライブ・エンタテインメント業界にとって、東京オリンピック/パラリンピックまでの数年間は本当に重要な時期だと思います。大人のエンタテインメントが日本にも根づき、本格的なナイトカルチャーが浸透していくかどうか。海外の皆さんにも、日本で行われているライブをごく普通に楽しんでもらえるかどうか。今、まさに岐路に差しかかっているんじゃないでしょうか。公正な価格で誰にでもチケットが取りやすいインフラを準備し、日本の強みである幅の広さとレベルの高さが両立した様々なイベントが用意できて、それを楽しむための会場が整っている。そんな環境を実現できれば、これから本当の黄金時代が来るはずです。そのためにもチケット不正売買の問題は、必ず乗り越えなくてはいけないと思います。