違いと共通点 2 *観客層*
TomorrowWorldには21歳以上の観客しか入場できず、観客層の大半は20代~30代でしたが、注目すべきはアメリカ・ヨーロッパ・アジアだけでなく、オセアニア・中東・アフリカなど、あまりロック・フェスでは見かけない地域の観客も多数来場していたことです。これはEDMの全世界的なブームに加え、ダンス・ミュージックそのものがリズムを主体とするため、言語の違いを比較的乗り越えやすい音楽であることも要因と思われます。
また、ロック・フェスではミュージシャンの人種や世代、ジャンルによって観客層がはっきり分かれてしまうケースも見受けられますが、TomorrowWorldではほぼすべてのDJが30代前後の白人男性でありながらも、あらゆる人種・世代の観客が思い思いのダンスで自由に音楽を楽しんでいました。それぞれ自国の国旗を振ったり身に纏ったりしながらフェスを楽しむ観客も多く、ダンス・ミュージックが国境や人種、国籍や言語の壁を越えて支持されている現状そのものが可視化されていました。
そういった観客によるフェスの楽しみ方として、合唱の文化が挙げられます。人気曲が流れると観客が大合唱するのですが、たとえその曲がインストでも、メロディーをシンガロングすることで、会場の一体感を高めていくという楽しみ方が共有されていました。そしてステージ上のDJも合唱を煽るだけでなく、時にはニルヴァーナやオアシス、ブルース・スプリングスティーンなど、ロックの有名曲を掛けて合唱のフックにする手法も見受けられました。