ジェイコブ・アダムス(以下A):このセミナーに参加できて、うれしいです。私達の仕事を皆さんと共有する機会をいただき、ありがとうございます。
ギデオン・フェルドマン(以下F):私達は障害のある方がライブへアクセスしやすくなるように、ライブ業界の方々と一緒に活動しています。
A:イギリスでは1995年に「障害者差別禁止法」が制定されていますが、現在、団体のCEOを務め、障害をもつ女性であるスザンヌ・ブルは、法制定後も国内のフェスティバルで身の危険を感じることがあったそうです。それでライブへのアクセスを改善する必要があると気付き、2000年にAiEを設立しました。
F:現在も小さな団体ですが、その活動はグローバルなものです。
A:「ライブ会場で障害者も差別なく、同じ体験を得られているか」「主催者側は法に則った義務を果たしているか」などの実態を調査することから始めました。ギグやフェスにミステリーショッパー(覆面調査員)を派遣し、約1500件のデータを収集しました。
F:改善の必要性を感じた場合は主催者や運営者と直接話し、高い評価を得た会場には2005年から「アウトスタンディング・アティテュード・アワード」と呼ばれる金・銀・銅のメダルを授与しています。
A:我々の目的は、より多くのオーディエンスにライブへアクセスしてもらうことです。2016年に386会場を調査したデータをベースに「アクセス・スターツ・オンライン」というサイトもオープンし、ユーザーに必要な会場ガイド(例えば「会場内に階段はあるか」など)も提供しています。また無料配布している冊子「DIYアクセスガイド」は12の言語に翻訳されており、各国のコンサートプロモーターへユーザーに提供すべき会場データをアドバイスしています。
F:イギリスでは17万人の障害者がライブに参加しているというデータもありますので、ライブへのアクセスを広げることはビジネスの上でもメリットが大きいはずです。
A+F:最後にAiEの5つのキーコンセプトをご紹介します。まずは「アクセスは情熱と想像力によって実現できる」。2番目に「アクセシビリティは地球上の誰しも関わりがある」。3番目は、これが最も大切なのですが「人は日常で遭遇する障害があって、初めて障害者になる」ということです。つまり、上れない階段があるから人は障害を意識するのであって、もしそれが簡単に上れるスロープであれば、障害は障害にならないのです。つまり、対応次第で状況は変えられることを、ぜひご理解ください。さらに4番目は「問題を解決するためには、クリエイティビティ、コラボレーション、テクノロジーが鍵になる」。最後に「障害をもつ方は多様であり、高度な専門性も備えている」。そんな障害者をバリアで追い返すのではなく、最初から巻き込んで一緒に楽しむアティテュードがあれば、ライブはより豊かになります。日本にも素晴らしいライブシーンがありますので、より豊かにするサポートを私たちができればと思います。