プロモーションの変化
―プロモーションなどでも変化はありましたか。
菅林:以前は地方興行の前に、選手が地元放送局のテレビやラジオ番組に出演したり、自治体の首長さんにご挨拶させていただくような機会はなかったのですが、中心選手が棚橋(弘至)や中邑(真輔/現WWE)になってから変わりましたね。彼ら自身が率先して動いてくれるようになり、そのうち選手達の知名度も上がってきて、色々なメディアからお声をかけていただけるようになったんです。
―オカダ・カズチカ選手、内藤哲也選手などの知名度も上がっています。
菅林:真壁(刀義)もそうですね。これは大会以外のプロモーションや芸能活動の窓口を、一部の選手を除いてアミューズさんにお任せした効果も大きいでしょう。棚橋の映画(主演映画『パパはわるものチャンピオン』)などは、アミューズさんの存在がなければ実現していなかったと思います。
それと大きいのはファンクラブの存在ですね。要は新日本プロレスのファンクラブ会員の方々が最前列からチケットを買えるようにしていったんです。それまでは手売りのお客様に買っていただくために「一番前の席もありますよ」という売り文句を使っていたんですけれど、そこも変えて「ファンクラブに入っていただければ、良い席をご用意できますよ」がセールスの入り口になりました。
配信+興行の海外展開
―音楽業界の手法と近くなったわけですね。その他、具体的に音楽業界を参考にされた点はありますか。
菅林:演出面を一番参考にさせてもらっています。うちの舞台演出関係者はコンサートをよく観にいっていて、勉強しています。ただ、勉強したものをすべてプロレスに取り入れられるわけではなく、プロレスの場合は大抵1日1公演、その日しか会場を借りませんので、仕込みやバラしを考えると経費的に難しいことも多いんです。
それとグッズもずいぶん勉強させていただきましたね。昔、プロレスの会場で売られていたグッズはTシャツとタオル、トレーナーくらいしかなかったんです。サイズも男性用のLL、L、Mだけで、しかも街なかで着られるようなデザインでもありませんでした(笑)。それを様々な種類が用意されているコンサートのグッズを参考にして、少しずつ変えていったのだと思います。商品も幅広くなり、グッズ担当の人員も増やして、他企業へのアウトソーシングもするようになりました。今では大会の興行収益に匹敵するくらいの売上規模になりましたね。
―さらなる発展を見据えた今後の展望は?
菅林:海外へ目を向けることが必要になってくるでしょう。現在、国内で行っている年間約150という興行数を増やすのは難しいと思いますが、海外での興行では手応えを感じています。テレビ朝日さんとの共同事業で、インターネット配信(新日本プロレスワールド/2014年12月〜)を始めて、英語実況・解説が付いている試合配信も徐々に増えて来ている中、海外のファンが驚くほど増えていて、今年のロンドン大会(8月30日)では今までに経験したことがないような反響がありました。日本やアメリカ(ニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデン大会/4月6日)以上の歓声でしたね。今はロサンゼルスにも道場がありますので、これからは海外を主戦場にできる選手の育成など、さらに海外展開に力を入れていきたいと思っています。