―法案を成立させるためには当然、政治のフィールドに足を踏み入れることになります。エンタテインメント業界と国会議員の方々との連携は、それほど例が多くないと思いますが、いかがでしたか。
中西:政治家の中に、我々の意図を理解して、一緒に闘ってくれる方々がいたことは、とても意義深いですね。本音をいえば、それまでは先入観もあって、できるだけ政治の世界には関わりたくないと思っていましたけれど(笑)。
野村:チケットの高額転売問題に対して、政治の側も「これは動かなきゃいけない」というムードになったのは、松田さんがおっしゃったように、一般の方々が味方になってくれたことが大きいですよね。中西さんを中心に政治家の方々とやり取りが始まった時に、お客さんの声が追い風になった。音楽ファン、色々な文化のファンの存在を背後に感じながら、政治家の方との対話が進んでいったという感じです。
中西:そもそも2012年にライブ・エンタテインメント議連をつくったのは、会場不足問題がきっかけでしたが、途中で大きく高額転売問題に舵を切ったという流れがありました。そこに東京オリンピック・パラリンピックのチケットの問題も浮上してきて、スポーツ界からもいい風が吹いてきました。
中井:野村さんがおっしゃった、世の中の流れに法律が追いつかないことは世の常なんですけれど、だからといって追いつくのを待っているだけでは何も起こらないことがよく分かりましたね。
野村:国会だけではなく、警察との情報共有や連携も大きな力になっています。1月10日に、ELLEGARDENの公演チケットを転売した人物が詐欺容疑で兵庫県警に逮捕されましたが、今回の法律ができる以前に、詐欺容疑で既に数件検挙されているんです。特定興行入場券に指定されたものではなくても、高額転売はダメなんですよ。そこから露呈したのは、ほんの少数の転売ヤーが、大量のチケットを買って売りさばいていたという実態です。詐欺罪で逮捕者が出たことによって、転売目的でのチケット購入が減り、その分のチケットが正規の市場に流通するようになるんだと知ってほしいですね。