他の音楽関連団体にはない、ACPCの最大の特長は、日本全国に正会員社のネットワークが広がっていること。各エリアのコンサートプロモーターの方々に、くまなく加盟していただき、そのネットワークが完成に近づいていけば、より「ACPCらしさ」を発揮できることになります。そういった意味では、広島でも長い社歴を誇り、アーティストとも密接なつながりを持ったユニオン音楽事務所に加盟いただいたことには、大きな意味があります。ヴォーカリスト、シンガー・ソングライターを中心にラインアップしたプロモートという個性を打ち出しながら、SETSTOCKと並ぶ広島の2大フェス、サウンドマリーナの企画・制作にも参加するユニオン音楽事務所・代表取締役の宮本栄治さんに、同社の社風が培われてきた歴史と、ACPCへの期待をお伺いしました。
会報誌 ACPC naviライブ産業の動向と団体の活動をお伝えします。
新加盟社紹介
ユニオン音楽事務所
百貨店ではなくブティック
弊社は設立から35年ほど経っていますので、演歌の興行を手掛けていた社を除けば、広島の同業者の中で一番早い創業だったと思います。設立時は歌謡曲のコンサートからスタートしたそうですが、時代の流れとともにロック、ポップス系のアーティストに移っていきました。実はだいぶ以前にACPCには加盟していた時代がありまして、今回の加盟は「復帰」ということになります。先代の社長は一匹狼的な考え方の人間で、昔はこの業界も今よりもっと魑魅魍魎としていましたから(笑)、団体に加盟している意味をあまり見いだせなかったのでしょう。今は時代も大きく変わりましたので、(同じ中国エリアのプロモーターの)夢番地さんとも、キャンディー(・プロモーション)さんともシェイクハンドしていますし、ACPCに加盟させていただく意味は大きいと思っています。様々なことで意見交換をしたり、時には団結してメディアと交渉していく必要もあるでしょうね。
弊社にはまだ「コンサートプロモーター」になり切れていない時代があったと思います。興行を運営するイベンターだったとしても、プロモーションを含めてコンサート全体をプロデュースするという意味でのプロモーターではなかった。もちろん、現在はプロモーターであることを目指していますし、実際にそうなっていると思います。ただし、どんなアーティストのプロモートもできるわけではありませんし、それぞれの社員が自分の感性で理解できるアーティストに関わっていきたいと考えています。カタログを見ていただければわかりますが、うちはヴォーカリスト、シンガー・ソングライターが多く、バンドものが少ないんです。それは流行に影響されているわけではなく、単純に感性の問題だと思います。お店にたとえるなら、百貨店ではなくブティック。広いジャンルを扱えるほどスタッフも抱えていませんし、資金力もありませんから(笑)、今後も自分達が得意なものを伸ばしていこうと思っています。
「声」がテーマのイベント
そんな中でも大規模な仕事といえるのが、サウンドマリーナですね。新広島テレビが中心となって主催しているフェスティバルですが、弊社も2002年から企画・制作の一員として参加しています。サウンドマリーナは新人アーティストの育成という意味では、非常に重要なイベントだと思います。そう、フェスというよりイベントなんですよ。中国エリアには、夢番地さんが手掛けているSETSTOCKというフェスがありますが、こちらは若いロックファンが集まる、まさにフェスだと思いますね。サウンドマリーナはもっと幅広い年齢層をターゲットにしていますし、「Feel the Voice」というサブタイトルが付いた、ヴォーカリスト中心のラインアップなんです。もちろんソロヴォーカリストだけではなくて、グループも登場しますが、声の響きを大切にしたいというコンセプトがはっきりしているんです。ブッキングはうちが単独でやっているわけではなくて、キャンディーさんも一緒にやっていますが、こういった方向性は理解していただいていますね。
ACPCに期待したいのは全国のコンサートプロモーターの地位向上です。音楽業界の中でプロモーターの存在が明確に認められているかといえば決してそうじゃない。プロダクションやメディアに対して、我々の仕事も重要だと認識してもらうためには、ACPCの活動はとても大事だと思います。